著名人も魅了するボックスカーフとは?【歴史からお手入れ方法まで】

先日、とある人気男性アイドルが自身の公式SNSに〈ボックスカーフにハマってる〉と写真を投稿しました。その投稿に約5万いいね!も付いていたんですよね。私もその投稿を拝見して気付いたんですが、「そもそもボックスカーフってどれだけの人が知っているのかな」ということ。

弊社でもOEMとしてボックスカーフを扱うことはしばしばあるので、知識には多少の蓄えがございます。

そこで今回の Flathority ブログではボックスカーフを徹底解説!

カーフという素材の基礎から掘り下げ、ボックスカーフの歴史・特徴・ケアまでを一気に整理します。それでは、いきましょう!

 


カーフとは何か?──牛革の年齢区分と特徴

ボックスカーフについて紹介する前に、前提知識として「カーフ」の意味を知る必要があります。皆さまはカーフの意味とその希少性をご存知でしょうか。

実は牛革は、と畜される月齢によって呼び名が変わります。と畜月齢が若いほど繊維が緻密でキメが細かく、柔軟性と軽さが際立つのが特徴です。

カーフはその中でもとりわけ早くにと畜された最高級品。欧州、とりわけフランスでは仔牛の食文化が根付いており、その希少な副産物である皮が高級革として流通します。

 

区分 月齢の目安 特徴的な表情
・カーフ 0〜6 か月 銀面(表面)が極めて滑らか。キメが細かく柔らかい
・キップ 6〜18(24) か月 カーフよりコシが強く、十分キメが細かい。高級バッグなどに使用される。区分は資料により変化
・ステア/カウ 成牛 厚みと耐久性に優れる一方、繊維は粗めでシボもはっきり

 

このように区分があるんですね。しばしば「全ての牛革=カーフ」とされていますが、これは勘違いです。カーフを厳密に定義するとどれほど希少かお分かりいただけるかと思います。

カーフの繊維密度は成牛を上回り、しなやかさと軽量性を兼ね備えます。細かいキメは高級感があり(実際、かなり高級なのですが)、トップメゾンや紳士靴メーカーに愛されてきました。

 

1つ注意点として、この区分は日本特有であるということ。

海外では生後18ヶ月までをカーフとすることも多いです。キップという括りは日本の独自規格で、海外ではあまり一般的ではありません。上記区分はあくまでも国内の基準であることを知っておきましょう。

関連記事:【初心者向け解説】牛革の種類や特徴まとめ

 


ボックスカーフとは?

カーフについて整理できたところで、ようやくボックスカーフについて、紹介します。

ボックスカーフとは、生後数ヶ月の仔牛の皮へクロム鞣しを施し、アニリン染料(またはセミアニリン)で芯まで染め上げたのち、艶出し仕上げ(グレージング)をしたカーフレザーのこと。

※社内にベリンガー社のクリスペルカーフがあったので、以降の写真で掲載しております。

 

ただし、JIS規格などで明確に定義されているわけではないため、曖昧な部分も多いです。上記に当てはまらずともボックスカーフと銘打ったアイテムも流通しています。あくまでも伝統的なザックリとした定義と理解しておきましょう。

 

ボックスカーフの名称の来歴

最有力とされる説は、19 世紀ロンドンの靴職人ジョセフ・ボックスが愛用した仔牛革が評判を呼び「Box Calf」と呼ばれるようになったというものです。

一方で「木箱で輸送されたから」「格子状にローラーを当てた“box-boarded calf”が語源」など複数説が存在します。(参考:山陽公式HP

 

余談ですが、イタリアのミネルバボックスは「ボックス」とあるが、全くの別物です。同名でも製法のルーツが違うのでご注意ください。

 

ボックスカーフを生産する代表的なタンナー

ボックスカーフはあくまでも総称であるため、様々なタンナーから個性豊かなボックスカーフが生産されています。今回は頻繁に目にする優れたタンナーを5社紹介します。

 

  • ワインハイマー(独):高級紳士靴御用達。落ち着いた光沢と履き込むほど増す艶が魅力
  • ペリンガー(独):革マニアも唸らせる実力派タンナー。今回紹介するタンナーの中では比較的小ロットの受注生産
  • デュプイ(仏):エルメス傘下のクロム鞣しを得意とする高級カーフタンナー
  • アノネイ(仏):こちらもエルメス傘下のタンナー。デュプイと共に世界最高峰のメゾンブランドへ皮革を供給している。
  • イルチア(伊):染色バリエーションが豊富。イタリアらしい遊び心がファンを獲得

 

上記5社は、どのタンナーもレザー好きなら1度は耳にする名門タンナーです。紳士靴ファンからすると永遠の憧れとも言えるかもしれません。

ボックスカーフの核心は「透明感のある艶×カーフならではの軽さ×屈曲への耐性」です。

元々、ドレスシューズで使用するために開発された素材ゆえか、屈曲に強いのは嬉しいポイント。

軽さと剛性を両立した特徴は、バッグとも相性が良く、メゾンブランドを中心にバッグへ転用されていきました。現在では名刺入れ・財布・時計ストラップなどポケットサイズの小物にも広がり、ラグジュアリーの定番素材として定着しています。

 


ボックスカーフのお手入れ方法・メンテナンス

「ボックスカーフが高級なことは分かった。高級ということは、お手入れもさぞかし難しいのでしょう」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際、先に名前の挙がったメゾンブランドでは、自己メンテナンスを非推奨としています。しかし、これはブランド資産を毀損するリスクを最小化するための総合的なブランディング戦略であり、実際のメンテナンスはそこまで難しいものではありません。

むしろ、一般的なレザーのお手入れ方法と同じやり方で十分です。

 

ボックスカーフのお手入れ方法

  • ・ブラッシング:使用後に馬毛ブラシでホコリを払い、浅い擦り傷を整えるだけでも艶は保てます
  • ・クリームは小豆1粒大:無色の乳化クリームを薄く伸ばし、ブラシで念入りになじませ余分を拭き取る。油分過多はシミの原因になるため注意が必要です。防水スプレーもオススメ
  • ・保管:靴はシューキーパー、バッグは詰め物+不織布袋で型崩れ防止をします。高温多湿と直射日光を避けましょう

関連記事:牛革のお手入れ方法をまとめた記事はこちら

 


まとめ

ボックスカーフは、カーフならではの繊維密度と軽さに、染色と艶出しによる透明感のある銀面(表面)を掛け合わせた優れた高級皮革です。

キメの細かな高級感と屈曲に強いという使い勝手が、人気アイドルだけに留まらず多くのレザーファンを魅了します。ドレスシューズでは足元を際立たせ、バッグで装いの核となる――使い込むほど光沢と愛着が増す素晴らしいレザーです。

現状、Flathorityでは取扱いのないレザーですが、記事の内容楽しんでいただけたでしょうか。

今後も1ブランドの枠を超えて、レザーの知識や面白さを発信していくので、引き続きご愛顧いただければ幸いです。

 

本日は以上です。

では、また。

参考:ワインハイマー公式サイト

 


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