世界のファッションシーンを牽引するミラノ・パリの2026年春夏コレクション。レディースコレクションこそまだ実施されていませんが、メンズは2025年6月に開催されました。
今年の序盤に開催された2025年秋冬版では、正直そこまでトレンドと言えるほどの共通した提案はありませんでした。(関連記事:2025年秋冬メンズバッグのトレンド解説)
しかし、2026年春夏では、なかなかに面白い共通事項があったのです。私自身が各ブランドのコレクションをじっくりと観察する中で感じた“共通した流れ”を、ここではご紹介します。
革の質感にこだわるFlathorityとしても、素材の扱い方や構造、色彩の使い方など、非常に刺激的な気づきが多くありました。ぜひ皆さまのもの選びのヒントにしていただければと思います。
この記事を読むことでメンズバッグのネクストトレンドを得られること間違いなし!
一緒に学んでいきましょう。
革と生地のコンビネーションが新たな標準に
まず最も強く印象に残ったのは、「レザー×ファブリック」のコンビネーションバッグが今季とにかく多かったという点です。
たとえば、世界のトップランナーであるHERMÈS(エルメス)は、ルックの多くがキャンバス生地に上質なレザーの組み合わせでした。(※以降コレクション画像はhttps://www.fashion-press.net/より引用)
HERMES(エルメス) 2026SS
堅牢で品格ある佇まいに、帆布ならではの軽やかさが加わり、日常にも旅にも使えるバランスの良さを感じさせます。
コンビネーションバッグは、エルメス以外でも様々なブランドで確認できました。
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) 2026SS
LEMAIRE(ルメール) 2026SS
EMPORIO ARMANI(エンポリオアルマーニ) 2026SS
このように、レザー単体もまだまだ豊富ですが、コンビネーションバッグがこれまでにないほど豊富でした。
素材同士の掛け合わせで魅せるスタイルは、次なるトレンドとして着実に成長していくでしょう。
実はFlathorityでも“独自の視点から新たなファッションを提案する“THE SOLEとコラボしたコンビネーションバッグを既にリリースしています。
弊社公式サイトでの取扱いはございませんが、気になる方はTHE SOLEからご確認ください。
コラボアイテムはこちら。
バッグの「前胴」が語りだす、構造的アクセント
バッグデザインで次に目についたのが、「前胴の演出力」が一段と強まっているという点です。前胴とは、バッグの前面のことを指します。
特に印象的だったのは、視線を引き寄せる立体的なディテールが随所に施されていたこと。
たとえばHERMÈSでは、2つのバッグを重ねたような、まるでマトリョーシカ構造のバッグが登場しました。
HERMES(エルメス) 2026SS
その他のブランドでも全面にポケットやチャームをあしらうことで独特のディテールを形成しています。SNSにおける見映えも重要視される時代ならではのインパクトをかんじるのではないでしょうか。
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) 2026SS
Acne Studios(アクネストゥディオス) 2026SS
「機能がそのままデザインになる」というような、構造を魅せるバッグが増えつつあるなと感じました。
カラーパレットは豊かに。春夏らしい彩度が戻る
色彩においても、今季は明らかな変化が見られます。
ここ数年はニュートラルカラーやモノトーンの“静かな高級感(クワイエットラグジュアリー)”が主流でした。2025年秋冬では季節性も相まって、ブラックやブラウンが最も多く、カラーパレットは慎重なラインナップだったのです。
一方、2026年春夏は、シンプルトーンも引き続きラインナップしつつ、春夏らしい明度・彩度のある色が復活しています。
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) 2026SS
CELINE(セリーヌ) 2026SS

DOLCE & GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ) 2026SS
こうした彩りは、「バッグはファッションの差し色である」という役割の再認識とも言えます。服装が軽くなる春夏だからこそ、バッグで色を楽しむ提案が広がっています。
起毛素材も含めた、素材の多様化が進行
春夏コレクションにも関わらず、起毛素材(スエード、バックスキンなど)の積極採用が目立ったのも注目すべきポイントです。これは2025年秋冬からの引き続いたトレンドといえます。
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) 2026SS
JW Anderson(JWアンダーソン) 2026SS
また、冒頭でもお伝えした通り、キャンバスも多く、他にもナイロンやプリントが登場しました。
PRADA(プラダ) 2026SS
今季は引き続いて「素材の自由化」が進んだシーズン。春夏でも“質感”を楽しむという考え方が広がっているのでしょうか。もしくは、多様化するニーズに応えた結果なのかもしれません。どちらにせよ、消費者にとってはバリエーション豊かで楽しいシーズンとなるでしょう。
ボストン型とトート型が2026SSの主軸に
バッグの形状としては、ボストンバッグとトートバッグの2軸が最も目立った印象です。
トートバッグは定番なので多いのは当然として、ボストンは復権の狼煙があがったといえます。
Paul Smith(ポールスミス) 2026SS
HERMES(エルメス) 2026SS
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) 2026SS
いずれもクラシックな旅行鞄をそのまま日常に持ち込んだような雰囲気で、「旅と街をつなぐデザイン」として非常に存在感がありました。共通していたのは、デザインや鞄の構造はベーシックということ。ブランドがもつ定番型や構造的には伝統的な形が多くありました。
奇をてらわず、使いやすさを前提にしつつ、素材・装飾・サイズ感で新しさを出すというアプローチが主流です。
なぜ今このトレンドが生まれたのか(背景分析)
ここまで最新コレクションを元にトレンドを紐解いてきました。
では、ここで紹介したトレンドはなぜ発生したのでしょうか。トレンドが生まれる背景には、それぞれ理由が存在します。ファッションは世界情勢やメッセージが内包されるものであり、トレンドの裏側を覗いてみましょう。
① 旅行回帰が旅鞄の日常化を後押し
国際旅行は24年にかけてコロナ前水準へ回復しました。25年も旅の需要は底堅い見通しです。この旅行への機運が高まったことがバッグのトレンドにも影響したと考えられます。
ボストンなんてまさに旅行鞄のド真ん中。ルイ・ヴィトンも今回のコレクションテーマはインド旅ですし、トラベル×日常の象徴ともいえるでしょう。
② 過度なインフレへの疲労感
HERMES(エルメス) 2026SS
レザー×生地はフルレザーと比べると価格的な合理性があり、機能性以外にも消費者マインドに刺さるアイテムになっていると考えられます。
近年は日本だけでなく世界中でインフレの傾向があり、高額商材も消費の息切れ感がでてきました。GUCCIを抱えるケリンググループは2024年の純利益が6割減となるなど、価格疲労が話題となっています。
こうした経済的な背景からもコンビネーションバッグが増えているのかもしれません。
③ SNSの見映えとクワイエットラグジュアリーのミックス
2~3年前はSNSに踊らされた時代ともいえます。過度な装飾性がもてはやされ、ロゴなどを押し出したアイテムが多く登場しました。その反動として直近の1~2年は「クワイエットラグジュアリー」という上質素材を用いた過度な装飾を避けるミニマルトレンドがありました。
最新トレンドではこの折衷案ともいえるバッグが見られましたね。前胴部分にポケットなどの機能性を持たせ、機能をデザインとして昇華させています。このように主張はあるけれど、過剰ではない。SNS映えもするが行き過ぎていないデザインが多かったように思います。
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) 2026SS
その他、カラーパレットや素材感は時代の多様性、季節性を反映した結果でしょう。多くのトレンドが生まれては消えていきますが、その背景にまで思いを馳せて、よりトレンドを楽しんでいきましょう。
まとめ:2026SSは「融合と実用」のシーズン
2026年春夏のバッグトレンドを通して感じたのは、「融合」と「実用」がキーワードだということ。
・レザーとファブリックの融合
・装飾と機能の融合
・クラシックとモダンの融合
・春夏と起毛素材の融合
そしてそれらはすべて、「日常で使いやすい」という実用性をベースに成り立っているようにも思われます。長く使えること、持ちやすいこと、気分が上がること。それらすべてを成立させようとする試みが、2026SSシーズンのトレンドの芯になっているのではないでしょうか。
Flathorityとしても、こうした「素材」「形状」「実用性」をバランスよく取り入れた製品作りを今後も追求してまいります。
未来のトレンドを先取りして、楽しいメンズバッグライフを楽しみましょう!
本日は以上です。
では、また!