レザーの世界って、言葉が似ていて分かりづらいですよね。
「グレイン?フルグレイン?スプリット?ジェニュイン?」——ショップで表示を見たときに、何がどう違うのかをスッと理解できると、お買い物がガラッと楽になります。
本記事では、まず皮の“層”という大前提を押さえつつ、4つの言葉をサクッと整理。最後によくある誤解ポイントもまとめました。
読み終わるころには表現による思い違いをかなり減らせるはずです!
では、いきましょう。
まずは“層”の話
今回の話をするにあたって土台となることを整理していきます。それは皮を構成する層について。
グレインレザーやスプリットレザーとは、この層を削ったり分けたりした物を指す表現です。なので、簡単に皮の構造を整理して起きましょう。
1枚の皮は上から銀面(=乳頭層)(grain layer)→網状層(corium)→肉面(flesh)という層でできています。
正確には銀面のさらに外側に表皮があるのですが、これは鞣し過程において取り除かれます。
銀面は別名で乳頭層と呼ばれ、繊維が緻密に絡み合った部分です。その下に太い繊維が緩やかに絡み合った網状層があります。
肉面は筋膜などの皮ではない部分ですね。こちらも製造過程で取り除かる部分です。
つまりは、繊維の緻密な銀面と繊維の粗い網状層の2つが、皮を構成する主な層になります。
皮膚構造については日本革市さんにもっと詳しい情報があるので、さらに詳しく知りたい方はこちらもオススメです。
まずは、この前提をきっちりと押さえておきましょう。
紛らわしい言葉
では、ここから冒頭で登場した紛らわしい言葉たちをご紹介します。似ているけれど、意味が違ったり、思っていたよりも簡単な定義の言葉が登場します。認識を整えて、勘違いや誇大広告に惑わされないようにしましょう。
グレインレザー(grain leather)
グレインレザーとは、銀面=グレイン層が残っている革のことを指します。つまりは、皆さまがよく目にする普通のレザーのことです。(スエードやベロア、コードバンは除く)
今回、解説するにあたっていくつかのサイトをチェックしました。そしたら「シボがある革や型押し=グレインレザー」みたいな意味で紹介しているサイトがあったんですよね。実際、業界に身を置く者として、グレインレザーといえば型押し革として語られている印象がります。
しかし、これは厳密には誤りかなと。
本質は銀面が残っているかどうかを指しているため、ツルッとしたスムースかキメを強調したシボ革かは関係ありません。
まぁ言葉は変遷していくものですから「グレインレザーをシボ革や型押しとして軽く紹介することもあるんだな」くらいに思っていただければ大丈夫です。
まとめると、グレインレザーとは、最も一般的な銀付きレザー全てがグレインレザーです。場面によってはシボ革や型押しに限定した表現としても用いられます。レザーの優劣を決めるものではないことを知っておきましょう。
フルグレインレザー(full-grain leather)
続いては、フルグレインレザーです。グレインレザーと似た言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
フルグレインレザーとは、銀面を一切削らず残した上位の銀付き革です。
実は、先に紹介したグレインレザー(銀付き革)であっても、ほんの少しだけ銀面を削っていることがあります。これは動物由来の傷を減らしたり、溶剤の浸透度を増すために、広く一般的に行われています。
一方、銀面を全く削らずに補正・研磨をしていない革こそフルグレインレザーです。
フルグレインレザーは銀面をまったく削らないため、薬剤が繊維まで浸透しづらく、追加工程が必要になる場合が多いです。結果として加工コストが高くなる傾向があります。また、元傷も誤魔化せないため、取り都合が悪く、バッグなどの製品になると更に高価という代物です。
高価であるものの、銀面を全く削らないため、屈曲に強いです。銀面が割れたり銀浮きも少ないとされます。
スプリットレザー(split leather)
続いてはスプリットレザーです。
スプリットレザーとは、銀面を剝いだ“下層”の革を指します。
分割(スプリット)工程で得られる層で、銀はありません。先ほどの革の構造でいうところの、網状層のみということですね。
そのため、表情は起毛(スエード等)や塗膜・型押しとして加工されます。過去記事で紹介したナッパラン加工もスプリットレザーに属すといえるでしょう。
関連記事:ナッパレザーとは?ナッパラン加工との違いと選ぶ際の注意点
スプリットレザーはエコやコスト、スエード表現のために選ばれるといった具合です。
ジェニュインレザー(genuine leather)
たまにタグに記載されているこちらの表現、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
ジェニュインレザーとは、本革(合皮ではない)のことを指します。
ジェニュインとは、日本語で「本物」という意味です。つまり、合皮などが溢れる中で本物の革を使っていますよ、と証明するために用いられる表現こそジェニュインレザー。
また、ジェニュインレザーに優劣や等級を示す効力はありません。つまり、先にご紹介したフルグレイン〜スプリットも言い換えるとジェニュインレザーです。
本革であれば幅広く含みうる傘用語で、これ単体の表示からは優劣どころか、牛革なのか豚革なのかさえ読み取れません。
ジェニュインレザー=本革と覚えておきましょう!
誤解されやすいポイント
ここからはこれまで紹介した内容を元に、よく誤解されているポイントをご紹介します。似た表現があり間違えやすいので、ここで解消していきます。
「フルグレイン≠トップグレイン」
グレインレザーの中にはトップグレインレザーというものがあります。これは先に登場した「ほんの少しだけ銀面を削っている銀付き革」を指します。
フルグレインレザーは銀面を削らない革ですから、フルグレインとトップグレインの性質は全くの別物。トップと聞くと頂点を思い浮かべて高級品と思われてしまうかもしれませんが、より高価なのはフルグレインレザーです。
「ジェニュイン=高級」?
これは誤りです。ジェニュインという表現は“本革である”以上の情報を含まないのが基本となります。あくまでも本革の証明ということを指しています。
「スプリット=偽物」?
スプリットレザーは本革です。ただし、銀面は持たない床革や銀面のように見せた加工をしたものなので、エイジングは控えめです。偽物ではないものの、ヌメ革のような物性はないことを知っておきましょう。
まとめ
本日は皮革業界で度々耳にする紛らわしい言葉をご紹介しました。似た表現や詳細まではあまり解説を見かけない専門用語があったかと思います。
最後に本日ご紹介した言葉を整理しました。
- グレインレザー=銀面が残る革の総称。一部、シボや型押し革を指すことがある。
- フルグレインレザー=銀面を削らない銀付き革。革が割れづらい。また、高価で取引される。
- スプリットレザー=網状層以下で床革。銀の持つ強さや味は控えめ。
- ジェニュインレザー=合皮ではない“本革”を示す広い表示。等級には関係ない。
この他にも意外と解説されていない言葉はたくさんあります。過去の記事でも紹介している分があるので、もっと知識を深めたい方はこちらもお楽しみください。
本日は以上です。
では、また!