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消えゆく高品質原皮:その理由と未来

 

「消えゆく高品質原皮」

 

タイトルだけでドキッとされた方もいるかもしれません。しかし、これは決して誇張ではなく、現在のレザー市場の実情を表す言葉です。

美しいレザー製品の裏側では、質の良い原皮を手に入れるための激しい競争が存在しています。そして、その競争は年々激化しているのです。なぜ今、良い原皮が奪い合いの対象となっているのか、その理由を紐解いていきましょう。

レザーアイテムの生産の裏側を知ることで、損しないお買い物の参考となれば幸いです。

 


そもそも原皮って何? その魅力と重要性

まず、原皮について簡単におさらいしておきます。

原皮とは、動物の皮を加工する前の状態を指し、革製品を作るためのスタート地点となる素材です。毛を取り除き、防腐処理が施された状態で保存されており、食肉の副産物として生産されることが一般的です。

原皮はそのまま輸送が可能で、国内で加工されるレザーも海外からの輸入原皮を用いることが多くあります。

この段階でどれだけ良質な原皮を手に入れられるかが、最終的なレザー製品の品質に大きく影響するのです。どの部位や生産国であっても、原皮の質が低ければ、どんなに優れた技術を持つタンナーでも高品質な革には仕上げられません。

 

たとえば、アメリカやフランス、北欧などの寒冷地域で育った牛の原皮は気候のおかげで傷が少なく、しっかりとした繊維構造を持つものが多いです。

そのため、こうした地域の原皮は世界中のタンナーから重宝されています。逆に、気候や飼育環境が影響して、同じ牛革でも品質にばらつきが出ることがあります。だからこそ、良い原皮を手に入れることが、上質なレザー製品づくりのカギになるのです。

 


原皮は奪い合う時代

現在、原皮はまさに奪い合いの時代に突入しています。背景には、世界的な人口増加と中流層以上の増加があり、それに伴ってレザー製品の需要が急激に上がっています。

特に、中国やインドなどの新興市場では、中流層の増加により高級革製品の需要が増加し、それに対応するために各国のコングロマリット(例:ルイ・ヴィトンやケリングなど)が原皮を高値で買い集めているのです。

(レザーの需要増と新興市場については本革市場レポート、2024年 | 2032 年の予測 (businessresearchinsights.com)より参照)

 

レザーの需要が高まり続ける中で、日本のような経済規模の国が質の高い原皮、いわゆる等級の高い原皮を確保するのはますます難しくなっています。

資本力に勝る企業が、原皮を買い占める形で市場に影響を与えており、日本国内のタンナーやレザーブランドが高品質な原皮を手に入れるのは一苦労です。

実際、ある革問屋さんから聞いた話では、良い革は「ハイブランド → 中国 → 韓国 → 日本」の順番に回ってくることもあるそうです。この順番で見ると、日本に届く頃にはすでに上質な原皮の多くが買い占められてしまっていることがわかります。

さらに、原皮は食肉の副産物であるため、その供給には絶対的な限界があります。

食肉産業の価格競争が激化する中、飼育者がコスト削減のために皮膚や毛皮に対するケアを省略するケースが増えています。例えば、以前は皮膚の状態を良好に保つための管理が徹底されていましたが、最近では経済状況の悪化によって、主な収入源であるお肉だけにケアを集中させるようになり、高値のつかない副産物の表皮は後回しにされがちです。

結果として、虫や汚れがついたまま放置されることも増え、原皮の品質が低下しているというのが現状です。

 


レザーの値段高騰が止まらない理由

このような背景を受けて、レザーの価格は今後さらに上昇することが予想されます。

近年のレザー価格の高騰は目を見張るものがありますが、これは一時的な現象ではありません。日本の経済状況や生産労働人口の減少を考えると、国内での原皮の仕入れや加工コストが増加し、最終製品の価格も高くなることが考えられます。

 

特に、日本国内のタンナーやレザーブランドは、海外の大手企業と直接競争する中で、コスト面のハンデを抱えているため、今後も価格の上昇は避けられないでしょう。

つまり、現在のレザー価格は「まだ序の口」であり、将来的にはさらに高騰していく可能性が高いのです。

これは単なる予測ではなく、実際に現場で働く職人や業者たちの声からも感じ取れることです。

 


レザーは今この瞬間が買い時

「レザーは今、この瞬間が買い時」と聞くと、不安を煽るようで恐縮ですが、事実として良質なレザーアイテムはどんどん高価になっています。前述のように、原皮の確保が難しくなっていること、そして価格の高騰が続くことを考慮すると、今が最もコスパの良いタイミングと言えるでしょう。

 

さらに、現在手に入るレザーの品質も、需要の増加によって今後変わっていく可能性があります。高級ブランドや高品質なレザーを求めるなら、今が最も「ハイクオリティでハイコスパ」な時期かもしれません。

レザー製品の魅力は、その美しさと耐久性だけでなく、使い込むことで育つ「経年変化」にあります。だからこそ、この機会に一生物のレザーアイテムを手に入れて、その変化を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 


まとめ

今回は「消えゆく高品質原皮」というテーマで、現在のレザー市場の背景と将来の見通しについてお話しました。

世界的な需要の増加と、それに伴う価格競争の激化、そして経済状況の変化が相まって、良質な原皮を確保するのは非常に難しくなっています。

 

しかし、こうした状況だからこそ、今のうちに質の高いレザー製品を手に入れておくことが、賢明な選択になるでしょう。良い革を育てるには時間がかかりますが、その分手にしたときの喜びは格別です。これを機に、レザーの魅力とその奥深さを改めて感じていただければ幸いです。

 

本日は以上です。

では、また!

 

2024.10.18 | その他
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