BLOG
改めてシェルコードバンとは?【革製品のメーカーが特徴を総まとめします】Part1
Flathorityが取り扱う皮革の中でも群を抜いて人気をいただいているシェルコードバン。
レザー好きにはお馴染みとなっている高級皮革の一つで、美しいキメと圧倒的なエイジングが特徴的です。シェルコードバンはその美しさから「革のダイヤモンド」とまで評されるほどで、シェルコードバンに憧れを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな大人気のシェルコードバンですから調べてみれば様々な情報が溢れています。エイジングレビューはもちろん、お手入れ方法まで多くの情報にアクセス可能です。
しかし、これだけ情報がたくさんあると、自分が欲しい情報を精査するも大変ですよね。加えて、ネットにあるレビューの多くは一般のお客様によるもの。革を専門に扱う製作者側からの発信はまだまだ少ないように感じます。
そこで!
革製品のメーカーとして創業以来半世紀以上も革製品に関わり続け、ファクトリーブランドとしてシェルコードバンを扱っているFlathorityが、メーカー目線も交えながらシェルコードバンの特徴を総まとめしてまいります。
シェルコードバン特有のメリット・デメリットを正直にお伝えしていくので、どうぞお楽しみください。
それでは、いきましょう!
そもそもシェルコードバンとは?【ホーウィン社が手掛ける馬のお尻の革です】
まずはシェルコードバンの概要を確認していきます。
シェルコードバンとはアメリカ・ホーウィン社(HORWEEN)が手掛けるコードバンのこと。シェルは商品名称みたいなものです。
ホーウィン社はアメリカシカゴにある老舗タンナー(革をつくるメーカーのこと)です。創業は1905年と1世紀以上もの間、革を作り続けてきました。多くのタンナーが効率化や大量生産を目指して工業的な製法に移っていく中、ホーウィン社は変わらず昔ながらの製法を貫き続けています。手間のかかる手法を現代に残す貴重なタンナーです。
次に、コードバンとは、農耕馬の臀部(お尻)にある高密度な層(コードバン層)を削り出して作られる革を指します。
通常、一般的な牛革は銀面(革の表面)を使いますが、コードバンは皮の内部にある床面(革の裏側)を使用します。
このコードバン層は周囲の繊維層とは全く異なる性質を持つため、別の素材として扱われるのです。コードバン層は繊維の密度が極めて高く、かつ繊維同士の絡み合いの少ない構造となっています。そのため、伸びにくく型崩れしにくいという特徴があります。また、絡み合いの少ない繊維を寝かせることで美しい光沢を有するのです。
高密度な繊維の塊であるコードバン層は全ての馬に存在するわけではなく、限られた馬の臀部にのみ存在するため、原皮の確保も簡単ではありません。どれだけ大きなコードバンであっても一頭の馬から軽自動車用のタイヤ2つ分程度しか得られないのです。
タイヤ2つ分というと、Flathorityの長財布も4~6個程度しか作ることができません。その希少性がお分かりいただけるのではないでしょうか。
Shell Cordovan Round Wallet (FS-709) ¥66,000(税込)
加えて、シェルコードバンは昔ながらの製法で作られているため、仕込みから完成まで多くの時間を要します。なんと完成までに6ヶ月以上もの時間をかけるんだとか。だからこそ最高級皮革。原皮の希少性と完全までの時間の掛け方が途方も無いですね。
革のダイヤモンドとして君臨しているのも頷けてしまいます。
シェルコードバンの製造工程【6ヶ月間の道のり】
先程、シェルコードバンは完成するまでに6ヶ月以上かかるとお伝えしましたが、どんな作業にそれほどの時間を掛けているのか気になりませんか?
そんな、ついつい製造工程の内訳まで気になってしまう革が好きでたまらないコアな方は必見です。続いてシェルコードバンの製造工程を見ていきましょう!
- ■シェルコードバンの製造工程まとめ
・原皮をタンニンなめしする(約1月)
・一度取り出し、繊維密度の低い部分を削いだ後、再度タンニンなめしする(約1月)
・オイル入れした後、乾燥と熟成(約3.5ヶ月)
・色染めとグレージング(約0.5ヶ月)
なめしと乾燥に多くの時間が掛かっていることがわかりますね。
それでは、それぞれの工程について深堀りしてみましょう。
・原皮をタンニンなめしする(約1月)
シェルコードバンはタンニンなめしと呼ばれる製法で作られています。
タンニンなめし自体がとても手間のかかる手法ですが、シェルコードバンのなめしは更に面倒です。というのも、加工に使用されるなめし材はなんと2種類存在します。それぞれ異なるレシピを使用し、そのどちらともホーウィン社の独自ブレンド。わざわざ使い分けているところにこだわりを感じますね。
なめし材はタンニンを含む木材や樹皮から抽出されたものです。タンニン成分は皮革の強化や保存、質感の良い手触りや経年変化を与える役割を担っています。
今なお多くのファンを抱えるシェルコードバンの根幹ともいえるなめし材ですが、1905年から変わらぬレシピというから驚きですよね。
・一度取り出し密度の低い部分を削いだ後、再度タンニンなめしする(約1月)
更に、2つのなめし材を切り替える際に一手間加わります。
1種類目のなめしを終えた時点では繊維密度の低い部分も残っているため、余分な部分を削った後に再度なめしていくんだとか。
以上のなめし工程だけで2~2.5ヶ月の期間を要します。なめしだけでも多くの時間を掛けているのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
オイル入れした後、乾燥と熟成(約3.5ヶ月)
タンニンなめしを終えたシェルコードバンは続いての工程に移っていきます。
それはオイル入れと乾燥です。
カーリングと呼ばれる工程で、ホーウィン社が独自にブレンドしたオイルで革をハンドブラッシングしていきます。どの工程でも職人の手が掛けて作られているんですね。
その後、レザーは90日間寝かされ、オイルがシェルコードバンへ均一に浸透するように硬化させます。90日間寝かせることでコードバンへオイルが均一に浸透し、最終的な削り作業が可能に。この削り作業では、5ヵ月半かけて準備したコードバン層を完全に露出させます。
実際、シェルコードバンをお財布や小物に仕上げる際、オイルを大量に含んでいるため接着用のノリが付きづらいんですよね。オイルの含有量はエイジングにも影響しているので素晴らしい特徴なのですが、職人泣かせな部分でもあります。笑
色染めとグレージング(約0.5ヶ月)
最後は色染めとグレージングです。
シェルコードバンに使用するカラー剤はアニリン染料のみ。顔料は一切使用しません。そのため動物由来の特徴はそのままに、エイジングも大変期待できるレザーに仕上がるのです。
染料は5回ほど重ね塗りされ、乾燥と再塗布を繰り返します。シェルコードバンのワイルドで深みのある色は薄く何度も塗る重ねられたからなんですね!
この色染めは手作業でしかできないことらしく、どの工程でも人の手を離れることはありません。
染料が終わったら最終工程のグレージングです。
グレージングとはめのうと呼ばれるツルツルなガラスでシェルコードバンの繊維を寝かせる工程を指します。
シェルコードバンは「革のダイヤモンド」と呼ばれるほど美しく光沢が特徴的ですが、これがグレージングによるもの。
作業としては割と単純で、シェルコードバンの表面にガラスを高速で往復させます。ガラスの滑らかさと発生する圧力、熱によって繊維を寝かせることで高い光沢が得られます。
説明だけだと単純ですが、圧力の掛け方や機械のメンテナンスを怠ることはゆるされません。ガラスに少しでも欠点があるとすぐに革に細かい線を残してしまいます。ガラスは定期的に交換しているんだとか。
ちなみに、シェルコードバンはオイルを繊維の隙間に含ませているため、グレージングをしても繊維が完全に寝ることはありません。繊維が全て寝きらないからこそ、革に微細な奥行きが生まれるのです。これによってシェルコードバンはギラッとした光沢を獲得します。
【ツルッとではなくギラッと】です。ここがオイルコードバンであるホーウィン社の特徴と言えるでしょう。
こうして、私達メーカーが手にするシェルコードバンは以上の工程を経た後、日本に持ち込まれます。そして、完成したシェルコードバンをメーカーの職人がお財布やペンケースに仕立ててお客様の元へ届くのですね。
シェルコードバンの半年以上の旅を少しだけでも実感いただけましたか?
本日はここまで。Part2をお楽しみに!
シェルコードバンの概要と製造工程だけでかなりの文量になってしまいました。本記事は一旦ここまでとします。
次回は続きとして、完成したシェルコードバンに見られる特徴まとめや扱う上で注意事項、エイジングなどをお伝えする予定です。皆様が気にしているであろう、傷や曇りのお手入れもご紹介していくので、どうぞPart2もお楽しみに!
それでは、また~
2022年5月9日追加
続きをUPしました。こちらからご覧ください。
改めてシェルコードバンとは?【革製品のメーカーが特徴を総まとめします】Part2
シェルコードバンを用いたおすすめアイテム
Shell Cordovan BATEI Coin Cases (FS-708) ¥33,000(税込)
Shell Cordovan Short Wallet (FS-702) ¥41,800(税込)
Shell Cordovan Round Wallet (FS-709) ¥66,000(税込)