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【中・上級者向け】牛革の部位ごとの名称・特徴まとめ

皮革業界で最も代表的な存在である牛革。

流通量や加工性の高さ、豊富なバリエーションによって多くの方から愛されてきました。

おそらく「革=牛革」と連想される人がほとんどなのではないかと思えるほど、皮革製品の中でも強い存在感を放っています。

そんな牛革ですが、意外と細かな特徴や加工の違いは知られていないものです。

本ブログでも過去に「初心者向け牛革の種類や特徴まとめ」と題して、鞣しや染色などにフォーカスした記事をアップしました。

初心者向けとはありますが、玄人さんの復習にも使える記事となっているので、まだお読みでなければこちらも是非。


関連記事:【初心者向け解説】牛革の種類や特徴まとめ【好きな革が見つかる】

 

今回の記事はタイトルにもある通り、牛革の部位ごとの特集です。

先の関連記事ではあえてスルーしていた内容に切り込んで参ります。

 

正直、かなりマニアックな内容です。

加えて、レザーブランドが部位について解説しながら販売することもないため、皆様のお買い物に役立つのかも定かではありません。

 

なので、単純な知識欲!レザーが大好き!という愛好者の皆様だけ読み進めていただければ幸いです。

それでは、いきましょう!

 


部位ごとの特徴まとめ

まずは部位の名前を一挙にご承知します。

それぞれの詳細については後述していくので、気になる部分をご覧ください。

 

  • ■部位ごとの名前一覧
    ・半裁(はんさい/レーシング)
    ・丸革(まるかわ)
    ・腹革(ベリー)
    ・肩革(ショルダー)
    ・尻革(バット/ベンズ)

 

 

1つずつ見ていきましょう。

 


半裁(はんさい/レーシング)

半裁は牛1頭分の皮革を背筋で半分に分割したものを指します。

成牛の革は非常に大きくて重く、そのままでは鞣しにくいです。そのため、多くの場合は分割して扱われます。

 

欧州ではショルダー、バットのように特徴の異なる部位ごとに分けますが、北米では半裁が多くの場面で採用されてきました。

日本でも明治時代にアメリカから革の技術を導入した経緯から国内生産される成牛のほとんどがこの半裁であり、最もポピュラーな分割方法です。

後述する肩、尻、腹全ての部位を内包しており、用途に分けて裁断することができます。逆を言ってしまうと、全ての部位を含んだ状態なので、各部位の特徴を熟知して裁断しなければなりません。

 

デメリットとしては、革製品に向かない部位も含まれているため裁断のロスが多いです。また、最も良質な部位である背中で分割されています。

牛革における大トロとも言える部位が背中。そんな背中の裁断自由度が下がってしまう点は惜しいですね。

 


丸革(まるかわ)

丸革は全く裁断されていない牛1頭分そのままの革を指します。業者間では縮めて「まる」と呼ばれることが多いです。

国内生産の丸革はほとんどがカーフやキップなどの仔牛の革が多く、成牛の革は前述した半裁の状態で取引されます。

丸革も半裁同様に全ての部位を含んだ状態なので、裁断のノウハウが必要です。

デメリットとしては、半裁と同様にロスが多いことくらいでしょうか。

 

半裁とは異なり、最上部位である背中がそのままの状態なので裁断の自由度が高いところは嬉しいポイントになります。

牛革は背筋を中心に左右が鏡のようにシボ感や繊維密度が似ています。そのため、弊社の裁断職人いわく、鞄を左右に大断する長いパーツについては丸革が向いているとのこと。

このような大きな革は丸革で裁断すると良いそうです。

 


腹革(ベリー)

ここからは特徴が分かれていく部位別の紹介をして参ります。

最初にご紹介するのは腹の革にあたるベリーです。

腹部の革は繊維密度が緩く伸びやすい性質があります。

人間もまず伸びてくるのはお腹周りですよね。

 

シボ感もまばらで不均一なので、用途は限定的になります。

特に雌牛は出産や搾乳を経験することがあり、より伸びやすいこともしばしば。

そのため、ベリーはあまり鞄向けの素材とは言えません。

裁断時もテンションの掛からない見えづらい場所に使う程度です。基本的には避けられる部位といえるでしょう。

 


肩革(ショルダー)

名前の通り、牛の肩の部分にあたる皮革がショルダーです。

ショルダー最大の特徴は強度にあります。肩は頻繁に稼働する部位なので、太い線維と細い線維が密に混在し非常に丈夫な組織です。

そのため、強度を必要とする馬具やベルトなどに使われ、革製品との相性もバッチリ。

 

また、人間も同じですが、稼働する部分にはシワが強く残ります。牛革のショルダーもシワやトラが多く表情豊かです。

トラの様子。首に近いほど深いシワが刻まれています。

 

トラとはショルダーにしばしば見られる深い線上のシワを指します。文字通り、虎の縞模様に似た見た目をしており、個体差も様々です。

革の醍醐味の1つともいえる「同じ表情がない不均一さ」が最も感じられる部位こそショルダーといえるでしょう。

在庫を見せてもらえるお店であれば、好きな表情から選ぶのも良さそうですね。唯一無二な自分だけのレザーをお求めの方には最もオススメです。

 


尻革(バット/ベンズ)

バットは牛革のお尻から背中央にあたる皮革です。

あらゆる部位の中で、線維の密度ときめの細かさのバランスが最も高い水準で取れています。最も上質と言っても過言ではありません。

丈夫でばらつきも少ないため、レザーバッグでは胴面などの最も目に入るパーツで使用されます。

バットの寄り画像。均一なシボ感が美しい。

 

バットは正直に言ってデメリットはありません。強いていえば均一でキレイ過ぎるがあまりに味を感じにくいくらいでしょうか。

余談ですが、裁断時にバットの中央に虫刺されや擦り傷の跡があって使えないとちょっとヘコみます。笑

 


まとめ

本日は牛革について部位別の特徴をご紹介しました。

様々な部位を含んだ「半裁」「丸革」は最もポピュラーな皮革です。

続いて特徴の分かれる3つの部位に触れていきましたね。

 

繊維密度の低い「腹革(ベリー)」。シワやトラが印象的な「肩革(ショルダー)」。

最後が、均質で大トロな「尻革(バット/ベンズ)」でした。

寄りの画像は全て同じ牛革を撮影したものです。同じ個体であっても部位ごとで見た目も全く異なることがお分かりいただけたかと思います。

実際の市場では、使用している部位まで解説するブランドはそこまで多くありません。

販売員自身が部位まで把握していることもほとんどないと思っています。

なので、本日の知識は自身の中に秘めていただいて、商品選びの参考としていただければ幸いです。

間違っても販売員を問い詰めたり、知識マウントするようなことは控えてくださいね。

レザーアイテムを見かけた際に「どの部位をどのパーツにつかっているのかなぁ」と想像して楽しんだり、ちょっとした話題の1つとして嗜んでいきましょう。

 

たまに商品の解説ページに『ショルダーを使ったバッグ』などの記載も見かけますので、お買い物の参考にしていただければ幸いです。

 

本日は以上です。

では、また!

 

2024.04.27 | 革
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