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Flathority小話その20 国内皮革産業は無くなる?

タイトルを見て驚かれた方も多いのではないでしょうか。

かなり強いメッセージを内包していますが、これは日本が直面している本当のお話。

目を逸らしてはならない向き合うべき課題がすぐ目の前に迫ってきています。製造業全てに当てはまるお話ですが、皮革産業もこのままではほとんどが無くなるかもしれません。

今回は皮革産業を取り巻く現状を赤裸々に語りつつ、Flathorityが工場発のファクトリーブランドとして出来ることをご紹介します。

正直に申し上げると、以降で綴る内容はあまり明るい話題ではありません。とはいえ、消費者の皆様にも知っていただきたい重要なテーマとなっています。

 

ファクトリーブランド目線のコラムとして一緒にこの問題について考えていきましょう!

 


国内皮革産業が抱える課題

まずは国内の皮革が無くなってしまうかもしれないと考える要因を整理していきましょう。

今回は4つの課題をピックアップしてみました。

それが、以下の4つです。

 

  • ■国内皮革産業が抱える課題
    ・従事者の高齢化
    ・担い手を育てられない構造
    ・安価でも勝てないメゾンも育たない
    ・環境認証の獲得が必須になっていく

 

それぞれ深堀りします。

 


・従事者の高齢化

多くのニュースで見かける本テーマですが、皮革産業も同様に高齢化が著しくなっています。

私がお世話になっている職人の方々も9割は60代以上。60歳で若手と呼ばれているような状態で、平均は70歳前後です。一部40代の方もいらっしゃいますが極めて希少で、腕の良い若手職人は取り合いの状態になっています。

人口が減少しているのは皆様も知るところ。現在の総人口は1.24億人と言われていますが、総務省の発表によると2030年には1.16億人、2050年には1億人を割り9500万人程度になるんだそうです。

特に生産年齢人口の減少は著しく、2024年現在の15~64歳の人口は約7200万人ですが、2050年には5200万人程度になると予測されています。[国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)より参照]

実際には15~22歳で社会に出る方も少なく、専業主婦や理由あって働けない方を鑑みると2050年は人口の約半分以下しか労働していないことになるのです。

加えて、現在は仕事も多様化したことで、若者にとって製造業は不人気な職種となってしまいました。ブルーカラーよりもITや不動産などのホワイトカラーが人気を博しています。

皮革産業への従事者がより減っていくのは避けられない現実といえるでしょう。

 


・担い手を育てられない構造

担い手が減っているのであれば増やす取り組みをしたいところですが、それも難しくなりそうです。

国内メーカーが中国など人件費の安い国へこぞって出ていった1980年代。国内で次世代を育成できなかったツケが回ってきています。本来であれば今ごろは指導者になるはずであった40~50代の職人は本当に極わずかとなってしました。

また、日本の市場は値付けの構造として仕方ない所ではありますが、販売価格に対して実際に手を動かす職人に渡る賃金の割合が多くありません。

更に長年の不況が災いし、近年まではデフレ傾向にありました。結果として、労働に見合った単価を付ける事ができず、高い志を持って業界へ入ってきても「稼げない」という理由で辞めてしまうことも多いのです。

 


・安価でも勝てないメゾンも育たない

国産の難しい現状に「中価格帯しか作れない」というものがあります。

ファストファッションに代表される安価な商品は全て海外生産です。人件費が東南アジアと日本では全く異なり、どれだけ切り詰めても我々にファストファッションの価格帯は実現できません。

また、エルメスを代表とするハイメゾンも日本からは生まれにくいとされます。

その理由として、明治維新以降に貴族文化が衰退したこと。真面目ゆえにブランディングを得意としていないことが指摘されています。

  • 以上のように中価格帯しか作れない中で、市場の逆風も強いです。貧富の差は拡大し安い物か高い物が多く売れるようになりました。日本のブランドが得意とする価格帯は市場の需要から外れつつあるのです。

 


・環境認証の獲得が必須になっていく

昨今、頻繁に目にするようになったSDGsも皮革業界にとっては大きな課題になっています。

日本を代表するスニーカーブランドであるアシックスを例にしてみましょう。

アシックスは2018年から持続可能な皮革製造方法を推進するレザーワーキンググループ(LWG)に加盟しました。今後は環境認証を得たタンナーで製造される皮革の調達へ力を入れていくんだとか。(株式会社アシックス コーポレートサイト (asics.com)より参照)

こうした動きは欧州圏を中心に急速に広がりを見せています。

日本の産業を後世に残していくには、人口増加が見込める海外への輸出が肝になってくるのは明白ですが、国内皮革産業の環境認証に関する取得率は依然として低いのです。

2023年10月時点では先に登場したLWGの認証を獲得している事業者はわずか9社のみ。内タンナーは5社に留まります。(https://sanyotan.co.jp/note/president_interview_16より参照)

このまま世界の潮流に乗り遅れると輸出量はますます減少していくことでしょう。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2020年に発表した「令和元年度 皮革産業振興対策調査等 調査報告書」にも以下のような指摘があります。

「日本のタンナーが今後世界的に競争したいのであれば、環境やアニマルウェルフェアという視点を取り入れる必要はある。こうした要素を取り入れないと今後世界では勝負できなくなるであろう。」

 

環境配慮は誰もが目指すべき大きなテーマですが、日本の皮革産業にとって暫くの間は逆風になるかもしれません。

 


ファクトリーブランドとして出来ること

さて、皆様ここまで付いてきていただけているでしょうか。

なかなかにヘビーな内容だったかと思います。

これだけ多く重たい課題がある中で、一事業であるFlathorityに何ができるのでしょうか。

最たる取組みは直販です。

我々は企画・製造・販売まで一気通貫で行うファクトリーブランドになります。できるだけ直販することによって2つのメリットが生まれるのです。

1つ目は利益の確保です。小売店を挟まないことで高い利益を確保することができます。これは単に暴利を貪りたいわけではありません。

得た利益を職人へ還元したり、新しい機械を導入することが出来るようになります。こうすることで人材を育て、人手不足の解消が達成できるかもしれません。

2つ目のメリットは単価を抑えることができる点になります。これは消費者にとってのメリットです。

昨今の物価高騰には目に見張るものがありますよね。皮革製品は高価になりすぎてしまい「実用品から趣向品」へ完全に変わってしまいました。

そんな中でも直販することで値付けの構造を変化させ、少しでも手に取りやすい価格で提供することができます。ファクトリーだからこそ可能な取組みで業界とお客様双方がメリットとなるようなブランド運営を進めて参ります。

とはいえ、おそらく皮革の原価は今後も高騰していくでしょう。また、次世代を作っていく若者も夢がないと産業には入ってきません。次の担い手が夢を追えるようにもある程度稼げる産業へ変化していかなければなりません。

極端な安値売りは今後も出来ないことは予めお伝えする必要があると思います。その分、品質をより高めていけるように精進して参りますので、今後ともご愛顧いただければ幸いです。

本日は国内の皮革産業を取り巻く現状をご紹介しました。

楽観視できるほど状況は良くありませんが、少しずつでも変えていきたいですね。

変化するには現場だけでなく消費者の理解も重要になってきます。本日お伝えしたことも知っていただき、一緒に良い未来を作っていきましょう。

本日は以上です。では、また!

2024.05.11 | その他
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