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【原皮でも変わる】生産国別に印象をお伝えします
今回はよりマニアックな革のお話をして参ります。
先日は部位別に革の特徴をご紹介しました。皆様すでにご覧いただけましたか?
関連記事:【中・上級者向け】牛革の部位ごとの名称・特徴まとめ
実は部位だけでなく、革の元となる【皮】の生産国によっても特徴は変化するのです。
もちろん、1つの国の中で様々な種類の皮革が取り扱われるため、1つの完璧な属性は存在しません。日本でもクロムレザーやタンニンレザーはありますし、宮崎県と北海道で育った牛に違いが見られることでしょう。
本日お伝えする内容はあくまでも一般論といいますか俗説的な内容になります。ざっくりとした原皮の生産国ごとの特徴を知っていただいて、より皮革製品を楽しむキッカケとなれば幸いです。
では、いきましょう!
そもそも原皮とは?
本題に入る前に原皮について改めて整理していきましょう。
原皮とは、加工される前の動物の皮を指します。革製品を作るために使用される皮は、通常、毛を取り除かれたり塩漬けにしたりして保存されます。この防腐処理された状態が原皮です。
革はこの原皮をさらに加工してなめし処理することで完成します。
つまり、原皮とは皆様が手に取っている革の前段階に当たるのです。
原皮の時点である程度防腐処理が施されているため輸送することも可能です。そのため、国産のレザーであっても原皮は海外から輸入したものを使用することは当たり前のように行われています。
どうして国ごとに原皮の特徴が違うの?
原皮の定義が整理できたところで、本題に入っていきましょう。
タイトルにある通り、原皮は同じ品種の牛であっても生産国ごとに違いが現れます。
では、どうして違いが生まれるのでしょうか?
原因は主に2つあると考えられています。
その2つが「文化」と「気候」です。
原皮は食肉の副産物として生み出されるため、食文化に強い影響を受けます。例えば、フランス料理と日本食をイメージしてみてください。想像だけでもフランスは赤身肉、日本食はサシの入った霜降り肉を思い浮かべたのではないでしょうか。
つまり、食文化ごとに味の好みや傾向があり生育の仕方が変わってくるのです。
もちろん、飼育方法は味だけでなく原皮にも影響を及ぼします。食文化が与える影響は大きいといえるでしょう。
原皮の違いを生み出す2つ目の原因は気候です。
原皮も元を辿れば生きた動物の表皮なので、人間と同様に環境の影響を強く受けます。日本では冬に乾季が訪れるため、肌が乾燥して唇が切れることもしばしば。(私はメンソレータムが手放せなくなります)
反対に夏には蚊が増えたり発汗量が増えたりして肌トラブルも多いです。
このように、生き物であれば気候と身体に現れる特徴は表裏一体となります。文化と気候が原皮と密接に関わっていることがお分かりいただけましたか?
長くなりましたが、ここから国ごとの原皮について違いを見ていきましょう。
国ごとの原皮の違い
この記事で全ての国をご紹介することはできないので、ファクトリーブランドとして頻繁に見かけるレザーから5つの国と地域をご紹介します。
今回、紹介する国と地域は以下の通り。
- ・アメリカ
・フランス
・日本
・東南アジア
・北欧
それぞれ見ていきましょう。
・アメリカ
アメリカは世界でも有数の原皮の生産国です。
赤身肉の多い成牛の生産が非常盛んであるため、原皮はぶ厚くて繊維の詰まった強度のあるものが多い印象があります。
また、原皮は基本手に寒冷地域、山岳地帯で生産されるものが良質とされるため、アメリカの中でも特に北米の原皮が優れているんだとか。
寒冷地域は発汗が少なく、ダニや蚊などの虫害による傷も少なく済みます。「傷が少ない=使える範囲が広い=良質」となるわけです。
・フランス
フランス原皮といえば最高級品を生み出すことで知られます。
エルメスを代表とするフランスはファッションの中心地です。メゾンブランドへ供給する体制が整備されているため飼育方法が完全に確立しています。
もちろん、ファッションのために屠殺しているわけではありません。フランス料理では仔牛を食べる文化があります。食文化とタンナーが密接に関わることで、いただいた命を無駄なく使用するのです。
・日本
さて、我が国の原皮事情も見ていきましょう。
日本は食文化としてサシの入った霜降り肉を好みます。そのため、原皮も柔らかく優しい印象です。特に和牛は食肉と同様にブランド化され中国などへ輸出されています。
FlathorityのPCリュックも和牛の原皮を用いたアイテムです。
また、豚革の国内受給率は100%で海外からも人気となっています。弊社が本社を置く葛飾区のお隣さんである墨田区は豚革の一大生産地なんですよ!
・東南アジア
残る2つはざっくりと地域でご紹介します。
1つ目は東南アジアです。東南アジアは牛の原皮としてはあまりメジャーな存在ではありません。気温が高く虫害も多いことから牛革の有名なものは見かけない印象があります。
一方で、東南アジアはエキゾチックレザーが非常に豊富です。
赤道直下の熱帯性気候のインドネシアでは、多彩な爬虫類の宝庫といわれています。なかでもパイソンやクロコダイルは高品質なものが多いです。また、シンガポールには先に登場したエルメスへ供給するメーカーも存在します。
・北欧
最後に紹介するは北欧です。
フィンランドやスウェーデンから成る北欧も牛の原皮の生産地として有名です。
特に高級原皮といえば北欧のイメージが強くあります。
アメリカの紹介でも触れましたが、北欧も寒冷地という気候が非常に恵まれているといえるでしょう。アメリカよりも更に北緯に位置する北欧は年間を通して気温が低く、より虫害が少なく、肌理も非常にキレイになります。また、屠殺後の腐敗も最小限に抑えることが可能です。より鮮度を保ちながら防腐処理ができるため、高品質な原皮が生まれるんだとか。
北欧原皮は何度も見かけていますが、非常に優れたレザーが多い印象があります。実はFlathorityでも北欧原皮のレザーを用いたアイテムを考案中なので是非お楽しみに!
おわり
本日は国ごとの原皮の違いをご紹介しました。
ここまで細かくご紹介しましたが、実際にお買い物の際に原皮まで知ることは少ないかもしれません。「◯◯産のレザー」と謳っていても原皮まで紹介していることは稀ですからね。
逆をいえば原皮まで謳い文句にしているということは自信の現れです。なかなかお買い物の参考になることは少ないですが、知っておくことでブランド側のアピールを正確に受け取ることができるでしょう。
本日の情報が少しでもお買い物の手助けになれば幸いです。
本日は以上となります。では、また!