Since 1952 Flathority MADE IN JAPAN

BLOG

改めて鞣しとは?【なめしの種類や特徴をご紹介】

「皮」を「革」へ変化させる鞣し(タンニング)という工程をご存知でしょうか。

革好きの方であれば1度は聞いたことがある「鞣し」ですが、この工程を深く知る機会はそこまで多くありませんよね。

鞣しはタンナー(鞣しを行う業者)ごとにレシピが異なり、この違いによって十人十色の特徴を生み出します。レシピこそ千差万別ですが、大別すると3つのジャンルに分けられるのです。

本日はその代表的な3つの鞣し方である「タンニン鞣し」「クロム鞣し」「コンビ鞣し」についてご紹介。

そもそも鞣しとはなんぞやという点から各手法が持つメリットとデメリットまで切り込んで参ります。

それでは、いきましょう!

 


そもそも鞣し(タンニング)とは?

そもそも鞣しとは、いったいどのような作業なのでしょうか。皮が腐らなくなる理由って意外と知りませんよね。

鞣しとは、動物の「皮」を「革」として使用できる状態にするための工程です。

革の主成分であるコラーゲンというタンパク質は、ゆるく結びついており、隙間があるような状態になっています。これが自然のままでは時間と共に酵素や微生物によって分解されて、腐敗してしまうのです。

その腐敗を防ぐ役割こそ「鞣し」になります。

タンニンやクロムなどを用いて、コラーゲン分子間を結合、安定化させます。これにより、革に耐久性や柔軟性を持たせることが可能です。鞣しによって革は腐りにくくなり、長期間使用できるようになるのです。

https://sanyotan.co.jp/note/what-is-tanningより引用

 


鞣しの歴史革と人類の関わり

鞣しの技術は、紀元前数千年のエジプト文明やメソポタミア文明にまで遡ります。当時の人々は動物の皮を保存し、道具や服を作るために植物から抽出したタンニンを利用していました。

この自然由来の鞣し技術は中世ヨーロッパにおいても広く使われ、時間をかけてじっくりと革を仕上げるタンニン鞣しが主流でした。

https://www.isan-no-sekai.jp/column/6103より引用 古代エジプトの墓から出土した革のサンダル

 

19世紀になると産業革命が起こり、より効率的な生産方法が求められるようになります。そこで登場したのが「クロム鞣し」です。クロム酸塩を用いるこの方法は、短時間で大量の革を鞣すことができるため、革製品の普及に大きく貢献しました。

これにより、革は一部の特権階級のものから、多くの人々にとって身近な存在へと変わっていったのです。

日本における鞣しの起源は6世紀から8世紀頃とされていて、中国や朝鮮半島から伝わったとされています。その後、様々な発展を遂げる中で皮革の町が形成されるようになり、兵庫県の姫路市や東京都の墨田区が代表地となっていきました。

 


3つの鞣しを解説

鞣しという工程の解説から歴史までご紹介しましたが、いかがでしょうか。

鞣しというものの大枠を掴んでいただけたなら幸いです。

さて、ここからが本題。

鞣しの種類とそれぞれの特徴をご紹介します。各鞣し方にメリットとデメリットが存在するので、ご自身に合った鞣し方を見つけましょう!

 


タンニン鞣し【己だけの経年変化を楽しむ】

タンニン鞣しは植物の樹皮や木の実、果皮などから抽出された天然のタンニンを使って鞣す、最も古くからある伝統的な方法です。

タンニン鞣しの革は時間と共にツヤ感を増していく美しい経年変化を見せ、持ち主と共に成長していくのが大きな特徴となっています。使い込むほどに深みを増し自分だけの風合いが生まれることから、量産品であったとしても1つとして同じく物は存在しない唯一無二の存在になるのです。

また、天然素材を使用し環境に配慮した製法であるため、エコ意識の高い方には理想的です。

ただし、タンニン鞣しには注意点もございます。

タンニンを使用した革は水に弱く、雨に濡れるとシミができやすいという欠点があります。また、湿気による硬化が進みやすいため、湿度の高い環境では注意が必要です。

加えて、タンニン鞣しは色の制限があるとされています。鞣し材であるタンニンは茶色や赤みががった色を持つため、鞣された革自体も茶色く仕上がります。その上に色を乗せることから、鮮やかな色の染色は困難なんだとか。

ケアの必要も注意点の1つです。タンニンレザーはその美しさを保つためには、定期的なオイルケアが不可欠です。これには時間と手間がかかるため、忙しいビジネスパーソンにとっては少し負担になるかもしれません。

とはいえ、ケアの時間は楽しい趣味の時間でもあります。より愛着を増すキッカケにもなりますし、ある意味ではメリットでもあるといえるでしょう。

 


クロム鞣し【産業革命が生んだ革新手法】

19世紀の産業革命と共に登場した「クロム鞣し」は、工業化の象徴とも言える効率的な鞣し方法です。クロム酸塩を使用することで革はわずか数日で鞣され、耐水性や柔軟性に優れた製品が作られます。

クロムで鞣された革は水に強く雨の日でも安心して使えます。また、柔軟性が高いため使い始めから手に馴染みやすく、すぐに使えるのが特徴です。

製造にかかる時間が短く大量生産が可能なため、比較的手頃な価格で高品質な革製品が手に入ります。※クロム鞣しのレザーでも大変高価な素材も数多く存在します。

また、新品時の質感が長く続くという特徴もクロム鞣しならではかと。タンニン鞣しのような劇的な経年変化は期待できませんが、買ったときの質感を楽しみたい方にはメリットとなるでしょう。

一方、時間と共に変化する革の風合いを楽しみたい方には物足りなく感じるかもしれません。

 


コンビ鞣し(混合鞣し)【いいとこ取りのハイブリッドレザー】

最後にご紹介する鞣し方がコンビ鞣しです。

「コンビ鞣し」は、タンニン鞣しとクロム鞣しの良いところを融合させた鞣し方法です。まず、クロムで革を鞣し、その後にタンニンで仕上げることで、両方の長所を兼ね備えた革が生まれます。※タンニン→クロムの順番もございます。

この方法によって作られた革は、自然な風合いと高い耐水性、柔軟性を持ち、様々な用途に対応できる万能な素材となるのです。

 

難点としては、特化した個性の少なさが挙げられます。タンニン鞣しやクロム鞣しに比べると、特定の特徴に強く寄ることが少ないため、どちらかの特性に強いこだわりがある方には物足りないかもしれません。
筆者個人の感想としては、最もバランスの取れた鞣し方という印象を持っています。ある程度エイジングを楽しみつつも日常使いしやすい耐水性は非常に魅力的です。市場にあまり流通していませんが、一度チェックしてみるのもオススメです!

 


ご自身に合った素材を見つけましょう!

本日は革を作るうえで中核の工程となる鞣しについてご紹介しました。革製品を選ぶ際には、これらの鞣し方法の違いを理解することが重要です。

自然な風合いとエイジングを楽しみたい方にはタンニン鞣しが、耐久性や発色を重視する方にはクロム鞣しが、そして両方の良さを取り入れたい方にはコンビ鞣しが適しています。

革製品はただのファッションアイテムではなく、ライフスタイルや価値観を反映するパートナーです。どの鞣し方法が自分に合っているかを見極めることで、その製品が生活の中でさらに輝きを増し、長く愛用できる一品となるでしょう。

本日は以上です。

では、また!

 


タンニン鞣しを用いたアイテム


Shell Cordovan Short Wallet (FS-702) ¥41,800(税込)


Land Glasses Case (FP-507) ¥13,530(税込)

 


クロム鞣しを用いたアイテム


Dual Harness Tote L (FD-104) ¥57,200(税込)


Dual mini shoulder Bag (FD-102) ¥19,800(税込)

 

2024.08.23 | 革
上へ戻る
上へ戻る