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水染めコードバンはいずれオイルコードバンになる!?【2年間使用した経年変化を徹底解説】
コードバンと聞けば、その美しい光沢や耐久性を思い浮かべる方も多いでしょう。特にホーウィン社の「シェルコードバン」は、革好きにとって特別な存在であり、しっとりとした質感と深い艶が魅力です。
しかし、今回取り上げるのは「Flathorityオリジナルの水染めコードバン」です。
このコードバンもまた、時間と共に独自のエイジングを見せますが、驚きの変化が起こることもあります。
私も水染めコードバンを2年間愛用し使い倒してきました。結果、ある予想外の変化を遂げたのです。
「いったい何が起こったのか?」と感じるほどの変化を遂げたその秘密を、この記事で解き明かしていきます。エイジングを楽しむ方や、コードバンの深みをさらに知りたい方にとって、興味深い内容になるはずです。
それでは、詳しく見ていきましょう。
そもそもコードバンとは?3種類のコードバンの特徴
まず、コードバンについての基本知識をおさらいしましょう。
コードバンは馬の臀部から採れる革で、滑らかな光沢と圧倒的な耐久性が特徴です。革の中でも特に希少性が高く、「革のダイヤモンド」とも呼ばれます。その独特の繊維構造により、通常の革とは異なる美しさが特徴的です。
コードバンには主に3つの種類があり、それぞれ異なった特徴を持ちます。
■水染めコードバン
水染めコードバンは、染料使って色を加えたコードバンです。革本来の繊維感や自然な風合いをそのまま残した仕上げが特徴です。
傷やブクなどは付きやすいものの、使い込むうちにエイジングによって個性的な変化を見せます。グレージング(ガラスなどで磨き上げる工程)により、初期のピカピカとした反射の強い光沢が魅力の素材です。
■オイルコードバン
オイルコードバンは、オイルを多分に含んだ革で、ホーウィン社のシェルコードバンなどが代表的なレザーです。最初からしっとりとした柔らかさとギラリとした深みのある光沢を持っています。
■ウレタン塗装コードバン
ウレタン塗装コードバンは、革の表面にウレタン樹脂でコーティングを施したコードバンです。コードバンの天敵ともいえる傷や水に強く、長期間新品のような光沢を保てます。
一方、エイジングは基本的にすることはありません。いつまでも初期の輝きを楽しみたい方に向いた素材といえるでしょう。主にランドセルなどに採用されています。
以上がコードバンの種類と特徴でした。それぞれの特徴をぜひ覚えておいてください。この先紹介するエイジングレビューにも関わる内容なので、事前に違いを把握しておきましょう!
2年間使用した水染めコードバンの経年変化レビュー
私が2年間使用しているのは、[Flathorityの水染めコードバンの二つ折財布]です。
初めて手に取ったときの印象は、マットでナチュラルな質感と強い光沢、硬めでしっかりとした手触りが特徴的でした。
革は「育てる」楽しさがあるため、これからどのように変わるのか期待していましたが、その変化は予想以上のものでした。
その変化がこちらです。
新品と並べてみました。
いかがでしょうか。
革全体が柔らかくなり、購入当初の硬さよりはしっとりした印象になっています。
光沢はピカピカとした反射の強いものから、ギラリとした深いものへ変化しました。まるでオイルを含んでいるかのような質感で、使用のたびに感じる手触りは、もはやオイルコードバンのようです。この劇的な変化には正直、驚かされました。
つまり、ホーウィン社のシェルコードバンに近い質感へ変化してきているのです。
続いて、2年間使用した水染めコードバンと新品のシェルコードバンを並べてみました。
色味こそ違いますが、その艶感にご注目ください。やはり、ギラリとした艶が似ていませんか?
さらに3つを並べてみました。左から水染めコードバン新品、水染めコードバン2年使用、シェルコードバン新品です。
こうしてみると、艶感の違いをより比べやすいかと思います。やはり、長期使用した水染めコードバンはオイルコードバン化してきているのでしょうか。
では、なぜオイルコードバン化してきているのでしょうか。次の章では、その謎に迫ってまいります。
なぜ水染めコードバンがオイルコードバンのように変化したのか?
水染めコードバンがこのようにオイルコードバンのような質感へと変化した理由について、3つの要因を考えてみてみました。
■グレージングによる繊維の寝かしつけと使用による繊維の立ち上がり
水染めコードバンは、グレージング(ガラスなどで磨く工程)によってコラーゲン繊維が寝かされた状態で仕上げられます。しかし、日常的に使用していく中で、摩擦や折り曲げによって徐々に繊維が立ち上がっていきます。この繊維の立ち上がりが、革に奥行きのある光沢を生み出し、まるでオイルコードバンのような深みを与えるのです。
*トピックス
ここで気になるのは、「線維が立ってオイルコードバン化するのであれば、オイルコードバンは最初から繊維が立っているのか?」という点です。
実はオイルコードバンも、グレージングによって繊維を寝かしつけています。
しかし、水染めコードバンとは異なり、オイルコードバンは繊維間に大量のオイルが含まれているため、水染めコードバンほど繊維を寝かせることができません。わずかなコンマ数ミリの差ではありますが、これによって光が乱反射し、オイルコードバン独特の「ギラリとした艶」が生まれるのです。
また、オイル自体の反射も深みのある光沢に影響しているといえるでしょう。
■クリームメンテナンスの影響
私が行ったクリームメンテナンスもこの変化に大きく影響していると考えられます。
水染めコードバンはオイル含有量が少ないため、手入れの頻度によっても変化量をコントロールすることが可能です。油分を含んだクリームを定期的に塗り込むことで、革が徐々に柔らかくなり、しっとり感と艶が増しました。油分の補給が結果的にオイルコードバンに似た風合いを引き出したのです。
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■持ち主の使用環境
気温や湿度など、使用環境も革の変化に影響を与えます。
私は財布をバッグに入れたままにすることが多く、本来はそこまで変化する環境ではありません。しかし、雨に降られてしまってお手入れをしたり日々の使用による摩擦が起こったりと、艶を生み出すアクションが多くありました。
関連記事:【治し方】コードバンのお財布に大量の水ぶくれ?!
まとめ
今回は2年間使用した水染めコードバンが、オイルコードバンのような質感へと変化した経年変化についてレビューしました。
元々のピカピカとした光沢からギラリとした艶へと大きく経年変化したことがお分かりいただけたかと思います。
グレージングによって寝かされた繊維が、使用によって徐々に立ち上がり、光沢と奥行きが生まれました。また、定期的なオイルメンテナンスと使用環境がエイジングを更に促進し、オイルコードバンのような深い質感へと変化しています。
ただし、この変化は必ずしも全ての水染めコードバンで起こるわけではありません。
革のエイジングは、持ち主の使い方や手入れ方法、環境によって大きく異なります。また、個体差もありますからそれぞれのコードバンが見せる顔は、十人十色なのです。
では、「水染めコードバン」と「オイルコードバン」、どちらを選ぶべきなのでしょうか?
結論は、「どちらを選んでもOK」です。
変化を楽しみたいなら水染めコードバンがオススメです。エイジングによって徐々に革が変わり、奥深い艶が生まれる過程を楽しむことができます。
一方で、購入時から艶やかでしっとりした質感を楽しみたい方や、ホーウィン社製の革にこだわりのある方には、オイルコードバン(シェルコードバン)が最適です。購入直後からその独特の光沢を堪能できます。
ちなみに、オリジナルの水染めコードバンは生産が非常に限定的です。ご興味を持っていただけましたら、お早めにお求めいただければ幸いです。
エイジングレビューを参考にしながら、お好みのコードバンを見つけてみてください!
本日は以上です。
では、また!
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