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【Flathority小話その21】機械式時計の歴史から紐解く革製品の今後
あけましておめでとうございます。新年最初のブログはちょっとしたコラムからスタートです。
革製品は見た目の美しさや使い込む楽しさがあって特別な魅力を感じますよね。
筆者もFlathorityを運営する㈱猪瀬に入社する前に、皮革に魅せられた一人でもあります。
しかし、その革製品にとって現代はまさに過渡期。
逆風が吹き荒れているのです。
テクノロジーの進化やライフスタイルの変化で、革製品の位置づけが大きく変わりつつあるのをご存じでしょうか?
かつて時計業界が「クォーツショック」によって激震を経験したように、革製品も同じような変革の時を迎えています。
今回は、機械式時計の歴史をヒントにしながら、革製品の未来と、私たち消費者がどんな視点を持つべきかについて考えていきたいと思います。
コラムとしてお気軽にお楽しみください。
それでは、いきましょう!
クォーツショックとは?
1969年、セイコーが世界初のクォーツ時計「アストロン」を発売しました。
それまで主流だった機械式時計をはるかに超える精度、低コスト、ゼンマイを巻かなくていい便利さが世界中で注目されました。このクォーツ時計の登場で、一気にピンチに陥ったのが機械式時計。特に機械式時計を得意としていた多くのスイス製ブランドが危機に陥ったのです。
しかし、機械式時計はそのまま消え去ることはありませんでした。
時計に詳しくなくてもロレックスやオメガといった名前を一度は聞いたことがありますよね。むしろ、多くの男性の憧れとして、今も多くの機械式時計を販売するブランドが支持されています。
彼ら、今も生き残るブランドは「時間を知る道具」としてより優れているから今も存続しているのでしょうか。
答えは【NO】ですよね。道具という役割を超えて、「芸術品」や「嗜好品」として生まれ変わったから彼らは今も燦然と輝いているのです。
レザーの未来で起こる「クォーツショック」
現代の革製品もまた、大きな転換期を迎えています。
たとえば、電子決済の普及で財布の需要は減り、ナイロンやポリエステルの軽量で耐久性のあるバッグが主流になりつつあります。また、「アップルレザー」や「ヴィーガンレザー」などの人工素材も増えてきましたよね。
これらの流れはクォーツショックほどの大転換ではないものの、皮革という素材の存在感は徐々に低下しているのは間違いありません。
機械式時計がそうであったように、革製品も生き残りのためにその価値を見直す時期が訪れつつあるようです。「革製品にしかない魅力」を探していくと同時に、レザーを「実用品」としてではなく、「嗜好品」として再定義する必要に迫られているといえるでしょう。
レザー産業の淘汰と生き残り
機械式時計の歴史を振り返っていくと、淘汰と統合、生き残りの歴史でもあることが分かってきます。
クォーツ時計が発売される前は、全ての時計が機械式であったため、多くのブランドが存在していました。
クォーツショック後には、その後15年近くのときを経てその大半が姿を消すことになったのです。また、生き残ったブランドも大資本の傘下に入ったりと生き残るための選択を迫られました。
(ロレックスはいまだに独立企業ですし人気もあってすごいですね!)
革製品業界でも、同様の流れは見えつつあります。
高齢化と産業への新規参入者の少なさからそもそも職人が減っていますし、コロナ禍の影響もあって産業の屋台骨が揺らぎつつあります。そこに加えて、「クォーツショック的状態」ですから、色々と逆風があるといった具合。
正直に言うと、今後、全てのブランドが生き残れるわけではないでしょう。「使いやすいだけじゃなく、特別な何か」を作り出せるブランドだけが、この先も愛され続けると考えています。
Flathorityも実際に物作りを行っているメーカーという独自性やブログやSNSでの発信活動を通じて、皆様と通じ合えるブランドとして発展していきたい所存です。
消費者はどうするべきか?
滔々と革製品の今後を語ってみましたが、クォーツショックとレザー産業の類似性を感じられたでしょうか。
正直、「レザーの未来を聞いてもどうしたら良いか分からない」と思った方もいらっしゃるかと思います。私も1人の消費者として何を感じ取って良いかイマイチ分かっていません。
なので、簡単な心構えみたいなポイントをお伝えしていこうと思います。時代の流れは変えられないため、やってくる未来へ備えておきましょう。
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革製品はより「高品質」「高単価」になる
機械式時計はその存在を「完全な趣向品」とすることで現在の地位の獲得と生き残りに成功しました。今後、革製品も同じ方向に進んでいくと考えられます。
また、単価に見合った品質を提供するためにより品質管理が徹底されていくことでしょう。
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消費は投票行動でもあると知っておく
おそらく、レザーブランドは淘汰や統合を経て数を減らしていきます。存続していくには「使ってもらうこと」が大切です。
消費者の購買行動の結果こそ「今」であり、「何かが無くなる=必要とされなかった結果」でもあるといえます。安価で便利な物やフリマサイトが存在する昨今で、難しい話ではありますが心構えとして知っていただければ幸いです。
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とはいえ、無理はせず
まるで「買え買え」と言ってしまっているような文章になってしまい申し訳ありません。無理して購入する必要は全くございませんので、その点あしからず。
ただ、知ってほしいことは、「レザー産業どんどん変わっていくよ」ということです。
私も好きなブランドを応援したくてプロパーで買いたいところを2次流通で手にすることがあります。まずは予測される変化を念頭に入れておいて、レザーをお楽しみいただければ幸いです。
まとめ
革製品は今、大きな変革の波の中にいます。でも、それは新しい可能性が広がる時でもあります。
機械式時計がそうであったように、革製品も「実用品」から「特別な嗜好品」へと進んでいく過渡期といえるでしょう。
私たち消費者も、自分にとって本当に価値のある製品を見極める力を持つことが大切です。
次に革製品を手に取るとき、その背景や生み出された物語を知り、それを生活に取り入れる楽しさを味わってみてください。それが革製品の未来を形作る一歩になるのです。
「あなたにとって、革製品はどんな存在ですか?」その答えを、ぜひ次の選択で見つけてみてください!
本日は以上です。
では、また!
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