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サンプル職人は夢を実現にするお仕事
ものづくりの現場には、意外と知られていない重要な役割があります。あなたは「サンプル職人」というお仕事をご存じでしょうか?
実はこの世界には、デザイナーが描いた理想的なデザインを“形にしていく”スペシャリストがいます。
デザインの原案をもとに試作品を作り、量産へとつなげる——この重大な役割を担っているのが、サンプル職人なのです。
「どうやって絵に描かれたものを現実世界で再現するの?」と疑問に思う方も多いかもしれませんが、そこにはサンプル職人ならではの高度な技術や知識、そして真摯にものづくりへ向かう情熱が隠されています。
今回は、その「サンプル職人」というお仕事の魅力についてご紹介します。
サンプル職人とは
サンプル職人とは、デザイナーが描いた絵(デザイン画)や企画書をもとに、試作品を作り上げる専門家です。
「デザイナー」という言葉や仕事内容のイメージは皆さまにも広く知られていますよね。でも、そのデザイナーがいくら素敵なアイデアを描いても、「実際に作れる形」に落とし込まなければ商品としては成り立ちません。
サンプル職人はデザイナーの思い描くコンセプトや細かな要望を理解しつつ「量産化できる構造」を考え、実際に手を動かしてプロトタイプを作ります。
この工程がうまくいかなければ、不格好な商品が出来上がったり、使い勝手が悪くなったりしてしまうことも。また、低品質やコスト面で折り合いがつかないことから、そもそも商品化されないこともあります。
つまり、「ものづくりの始まり」ともいえる、非常に重要なポジションなのです。
デザインには無理がある?
デザイナーが描くデザイン画は、イメージやコンセプトを形にした、いわば「理想・夢」といえるでしょう。
しかし、そこにはしばしば「作る側の現実」が反映されていない場合があります。
たとえば、構造的に縫製が不可能なパーツの組み合わせだったり、部材の耐久性を超えた形状だったり……。
他にも、作ること自体は可能な構造でも、ミシン縫いでは作れない形状であることもあります。手縫いなら作れるけれど、コストが跳ね上がってしまうなんてことも珍しくありません。
「この形状、めちゃくちゃカッコイイけど量産化には向いていない…」といったジレンマが出ることもあるのです。
※もちろん、ものづくりを熟知したデザイナーも多いため、全てが上記の例に当てはまる訳ではありませんよ!
作れる形にするのがサンプル職人
そんなデザイナーの“理想的な絵”を、実際に「量産できる形」に落とし込むのがサンプル職人の真骨頂。
– パターン(型紙)の作成
– 素材の特性を見極めた組み立て方法
– 製造工程やコストを見据えた構造の選定
これらを一手に担いながら、デザイナーが意図するこだわりポイントはなるべく残す——という絶妙なバランス感覚が求められます。
もしデザインを大きく変えてしまえば、デザイナーの「やりたいこと」が実現できません。
かといって、あまりにも理想通りに作りすぎると、量産はおろか耐久性や実用性に問題が生じる場合も起こりえます。
そんな「理想と現実の間を取り持つ」のがサンプル職人の使命です。
理想と現実のバランスを取りながら形にする
サンプル職人のお仕事には、デザイナーや営業担当とのコミュニケーションも欠かせません。実際の仕事の場面では、デザイナーと直接やり取りをするだけでなく、注文を受けた営業担当と打ち合わせをするケースが多いです。
営業を経由しつつデザイナーの意図を汲み取るのは難易度が高く、情報を引き出すコミュニケーション力も求められます。
– 「この曲線はどうしても譲れない部分なのか」
– 「手縫いのコストは掛けて良いのか」
– 「生産設備をもった量産職人が担当するのか」
こうしたポイントをしっかり把握したうえで、必要ならば「ここを少しカットしましょう」「別パーツに分割して縫製を簡単にしましょう」といった具体的な提案を行います。
また、量産の際にどのような設備が必要か、どの工程でどれだけ時間がかかるかなど、生産ライン全体の知識も必要です。他にも、どの量産職人が担当するのか、その担当のミシンの種類や特性を把握しておくことも欠かせません。
絵から立体を想像してパターンを作る技術、素材ごとの特性を把握する専門性などサンプル職人には総合力が求められます。
サンプルが成功しなければ、展示会で光るアイテムにもなりませんし、ある意味「ものづくりの試金石」を作っているわけです。
その分、大きなプレッシャーも伴いますが、無事に商品化され多くの人に使ってもらえる喜びは何にも代えがたいものがあるでしょう。
まとめ
サンプル職人は、デザイナーの夢と現実をつなぎ、商品をこの世に生み出す要となる存在です。
一般にはあまり知られていないお仕事かもしれませんが、試作品を形にする重要な役割を担っており、ものづくりの上流工程で活躍しています。
もしサンプルが上手く作れなければ、そのアイデアは形にならず終わってしまう——それくらい重要なポジションでもあるのです。
「サンプル職人」という職業を少しでも身近に感じていただけたでしょうか。
デザイナーや営業担当の意向を尊重しつつ、量産可能な現実的な構造へと落とし込む——この職人技なくしては、多くの素敵な製品は世に出ることができません。
サンプル職人が支えるものづくりの世界は、私たちの身近に息づいています。ぜひ今度、何か新しい製品に触れたときには、そこに携わるサンプル職人の苦労とやりがいにも思いを馳せてみてくださいね!
手にする製品の裏側を想像してみると、見慣れた景色もまた新鮮に映るはずです。
本日は以上です。
では、また!
サンプル職人が活躍したアイテム
Dual Harness Tote M (FD-103) ¥49,500(税込)
Dual mini sholder Bag (FD-102) ¥19,800(税込)