レザー好きには知れ渡っている「シボ」という言葉。実はレザー界隈以外ではそこまで使われる言葉ではありません。
本記事では、そんなシボについて徹底的に深堀りします。言葉の意味だけでなく、シボを生み出す加工方法からメリット・デメリットまで丸ごと解説。
この記事を読み終える頃には、店頭で革製品を手にした瞬間に「これは空打ちかな? それともシュリンク?」と 通 の目線で選べるようになります。
それでは、本編に参りましょう!
レザーにおけるシボとは
「シボ」とは、革製品の表面に見られる独特の凹凸模様のことを指します。漢字では「皺(しわ)」と書き、その名の通り革表面に現れるシワ模様を意味します。
人間も手のひらを見れば無数のシワを見て取れますよね。このシワを様々な加工によって強調したり、模様を押し付けることでシボレザーは生み出されるのです。
シボは動物ごとに異なるのはもちろん、人工的に模様を形成することで、革に豊かで多種多様な表情を与えてくれます。
なお、Flathorityでもシボのあるレザーを使用したアイテムがあります。例えば当社のデュアルハーネスミニショルダーなどはいわゆる「シボ革」を採用しており、上品な凹凸のある風合いが特徴です。
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シボのメリット・デメリット
革表面にシボがあることで、スムース(ツルっとした)レザーと比べてどんな利点や欠点があるのでしょうか。【初心者向け解説】でも触れたように、スムースレザーは上品で高級感がある反面、傷が付きやすく目立ちやすいという側面がありました。一方でシボのある革には、その凹凸ゆえの長所がいくつか存在します。ここではシボ革のメリット・デメリットを整理してみましょう。
シボ革の主なメリット:
- 傷が目立ちにくい。シボ模様のおかげで細かな傷が表面に溶け込み、スムースレザーよりも傷が目立ちにくくなります。美観を損ねづらいことから、結果的に長持ちしやすいです。
- 一点ごとの個性が楽しめる。後述する型押しによるシボは除かれますが、自然由来のシボは部位や個体差による違いがあります。スムースレザーでも個体差はあるものの、シボ革の方が一層差異が大きいです。自分だけの一本、一点もののような風合いを味わえることも、シボ革製品を持つ醍醐味といえるでしょう。
シボ革のデメリット:
- 表面の溝に汚れが溜まりやすい。シボの凹凸部分に埃や汚れが入り込みやすい点はデメリットとして挙げられます。とはいえ、普段使いしながら時折布でサッと拭けば十分対応できる程度で、過度に心配する必要はありません。
- 好みによっては質感がカジュアルすぎる場合もある。シボの有無自体で革の品質が上下することはありませんが、見た目の印象はスムースと異なります。凹凸のあるシボ革はカジュアルでマットな風合いになりやすく、ピカピカの光沢や滑らかな手触りを求める方には不向きかもしれません。逆にシボ革のほうが指紋や傷を気にせず気楽に使えるため、「普段使いにはシボ、ビジネスシーンではスムース」と使い分けている方もいるようです。
以上のように、シボ革には日常使いに嬉しいメリットが多く、欠点らしい欠点はあまり見当たりません。
強いていえば上記のような点がありますが、スムースレザーと比べて品質上の優劣はなく、あとは完全にお好みで選んで問題ないでしょう。自分のライフスタイルや好みに合わせて、シボのある革かない革かを選択してみてください。
シボの代表的な作り方とそれぞれの特徴
ここまではシボの概要と大まかなメリット・デメリットをご紹介しました。ここからはよりマニアックに、シボの生み出し方についてみていきましょう。
一口にシボ革と言っても、そのシワ模様の生成方法にはいくつか種類があります。ここでは代表的な3つの加工法、「空打ち」・「シュリンク」・「型押し」について解説。それぞれシボのでき方が異なり、仕上がりの風合いにも特徴があります。
空打ち(からうち)
空打ちとは、革を大きなドラム(タイコ)状の機械に入れて回転させ、物理的に揉みほぐすことでシボを作る方法です。
いわば「水を入れない革の洗濯機」に革を放り込んでグルグルとかき回すイメージ。ご家庭でも洗濯機にかけた衣類がシワシワになりますよね。まさに洗濯機と同じ要領で革に自然なシワを付けていくわけです。
時間をかけてじっくり揉み込むため、革の繊維がほぐれてとても柔らかく仕上がるのも特徴です。こうして化学薬品などを使わず機械的作用だけで生まれたシワ模様は、不規則で大小様々な表情になりやすく、ナチュラルな風合いを楽しめます。空打ち加工によるシボ革は、部位ごとのシワの出方の違いがそのまま表れます。例えば繊維が粗いお腹や首の部分は大きく深いシボに、繊維が緻密な背中の部分は細かく均質なシボになるといった具合で、一枚の革の中でもシボ模様の変化が豊かです。
そのため製品ごとに唯一無二の表情が生まれ、「自分だけの革」を持つ満足感を得られるでしょう。
Flathorityのペンケースには空打ちで作られる銘革であるミネルバボックスが使われています。
柔らかな手触りと自然なシボ感を楽しみたい方には適した製法が空打ちです。
シュリンク加工(収縮加工)
シュリンク加工は、革を薬品に浸したり熱を加えたりして革そのものを収縮させる方法です。英語で「シュリンク(shrunk)=縮む」の名の通り、特殊な収縮剤や薬品を用いて革の銀面(表面)をギュッと縮めることで、表面に細かなシワ模様を生み出します。
革全体を均一に縮ませてシボを寄せていくため、まんべんなくシボ模様が入るのが特徴です。とはいえ、動物本来の肌理を用いて収縮させるため、空打ち同様に部位ごとで凹凸の大小があります。
一方、シュリンク加工では薬品処理の濃度や時間を調整することで、シボ模様の大きさや深さをある程度コントロールすることも可能です。例えば「大きく深いシボ」や「小さく浅いシボ」など、狙った風合いに仕上げることができます。
そのため、ひとえにシュリンクレザーといっても、その内実は千差万別。各タンナーによって独自のシュリンクレザーが開発されています。
シュリンクレザーは繊維が縮んで密度が増すため、弾力があって丈夫な点も優れたポイントです。上品なシボ模様を楽しみたい方や、「あまりクセの強くない革」が好みの方に向いている加工法といえるでしょう。
型押し(エンボス加工)
型押しは、文字通り型(模様のついた金属板やローラー)を使って革の表面に凹凸模様を押し付ける加工です。巨大なスタンプで革に模様を転写するイメージで、熱と圧力によってシボ模様の型をそのまま革に刻み込みます。
この方法を使えば、たとえ元の革がツルっとしたものでも人工的にシボ模様を再現することが可能です。
型押し加工のメリットは、なんといっても模様の再現性と安定感にあります。型さえ作ってしまえば、シボの大小や配置は自由自在。仕上がりも常に均一でムラがありません。
型押しは、シボ模様だけでなく、ワニ革やリザード(トカゲ)革など他の生物の鱗模様を型押しして仕上げた革も流通しています。動物の模様だけにとどまらず、幾何学模様からお花柄まで型さえあれば生み出せるのです。
一方で、型押しは他の加工と比べて革本来の風合いが出にくい面もあります。型押しによるシボはどうしても人工的に整えられた印象になりますし、圧力をかける分だけ革が多少硬めに仕上がる傾向も。
しかし、近年では「型押し×空打ち」といった他の製法を組み合わせて風合いを高めた革も登場しています。2種のシボ加工によって適度にコシと柔らかさ、シボの均一性を両立させているのです。
以上のように、シボの作り方次第で革の見た目や触り心地、風合いが変わってきます。それぞれ「空打ち=ナチュラルで柔らか」、「シュリンク=均一で堅牢」、「型押し=計画的なデザイン性」といった特徴があると言えるでしょう。
どの加工法にも一長一短がありますが、どれが優れているというより仕上がりの個性が違うだけです。ぜひご自身の好みに合ったシボの革を選んでみてください。
まとめ
今回の記事では、革の「シボ」とは何か、その種類やメリット・デメリット、さらに代表的な作り方と仕上がりの違いについて解説してきました。
ひと口にシボといっても、自然に生まれるシワ模様から人工的に施すパターンまで様々であり、それぞれに独自の魅力がありましたね。
シボ革は傷が目立ちにくく扱いやすいという実用面の利点がありつつ、一点ごとに異なる表情を持つというロマンも秘めています。一方で少しカジュアルな見た目になりやすいことは、人によってはデメリットと映る点もあるかもしれません。
もし「本革製品に興味はあるけれどお手入れや傷が心配…」という方は、ぜひシボ革のアイテムを手に取ってみることをおすすめします。実際に触れてみれば、その適度な凹凸ゆえの手になじみやすさや、高級感と実用性を両立した風合いにきっと驚くはずです。
今回ご紹介したようにシボの表現方法にも種類がありますので、バッグや財布選びの際は「これはどんなシボの革かな?」と想像してみるのも面白いかもしれません。
ぜひお気に入りのシボ革アイテムを見つけて、その魅力を存分に味わってみてくださいね。きっと革選びがもっと楽しくなるはずです!
本日は以上です。
では、また!
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