Flathorityはファクトリーブランドという形態を取っており、1つのレザーブランドでありながら、様々な他ブランドの生産も担う工場でもあります。
そんな工場だからこそ如実に感じることとして「レザーブランドの戦略が転換している」ことが挙げられます。
特に「販売数量と単価」というテーマは、皆様の購買にも直結する重要なお話です。
今回はそんなディープでダークなテーマについて語ってみたいと思います。
過去に掲載した【Flathority小話その22】でもお話ししたことと重複する部分もあるため、過去記事もぜひご一読いただければなと。
レザー業界の大きな変化について、語っていきましょう!
大量生産をしない、という選択
Flathorityはメーカーとして、他ブランドの生産も多く担っていますが、だからこそ肌で感じるポイントこそ「生産量の減少」という事実です。
大量生産をしなくなったという現象の良し悪しは後述するとして、生産量を減らしている背景にはどのような事情があるのでしょうか。
景気の波
皆さまは昨今の日本における景気をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
内閣府によると、2024年12月の景気動向指数は前月比で1.4ポイント上昇しました。(CI12月分(速報)の概要 より)
ただし、7か月平均だとわずかにマイナスで、長期で見たときの景気は「少し悪くなっている」といったところです。
一時的に景気が上向いたとはいえ、半年単位で見るとまだまだ厳しい状況が続きます。
そんな中で、物を作っても理想的に売れていかないという実情もあるのでしょう。
「大量生産をしたくてもできない」という景気によるジレンマがあるのです。
サステナビリティによる影響
さらに動物性素材の大量消費を避けたいという声も高まりつつあります。
SDGsなどの観点から「大量生産・大量消費を避ける」「長く使える質の高いアイテムを選ぶ」といった消費行動が注目されるようになり、職人技術を生かした少量生産やオーダーメイドにシフトする動きが出ています。
結果として「数を作らない・作れない」状況になりやすいのです。
関連記事:節約とエコを考えたなら本革製品を買え
生産量を絞ると価格は上がってしまう
生産量が減っている実情は分かりました。さて、生産量が減ると消費者目線ではどのようなことが起こるのでしょうか。
結論は「販売価格の上昇」です。これは2つの上昇要因があるためです。
物作りは数に比例して安くなる
実は物作りには、大量に生産するほど、1点あたりのコストを割り振れるため結果的に1点あたりの単価は下がるという図式があります。
この図式はシンプルながらも避けがたいもの。
たとえばバッグを1本縫うのも100本縫うのも、ミシンをセッティングしたり、材料を手配する回数は1回です。こうした作る前の準備を総じて「段取り」と言います。この段取りは大量に作るほど1点あたりに占める割合が減るのは、例の通りです。
また、この理論は材料の仕入先にも同様にいえることで、仕入れ単価も少量なほど高コスト化しやすいといえます。物作りの単価は作る量に逆比例しているといえるでしょう。
生産量が減る ⇒ 利益率の変動
物量が減った中でも企業は利益を同水準以上に保つ必要があります。
これは資本主義のシビアな現実ですよね。
少ない販売量で利益を確保するには、販売価格を上げて、原価率を下げることが必要になります。そうなると、レザーアイテムはこれまで以上に「高単価・高付加価値」にシフトせざるを得ない状況です。
以上、2つの観点から「生産量の減少=値上がり要因になる」ことがお分かりいただけるかと思います。
今回は生産量の減少という切り口でコスト上昇についてご紹介しました。
しかし、実際には原材料費や為替、海外における日本以上のインフレもコスト上昇の要因です。
以上を鑑みても、【Flathority小話その22】でも例に挙げたように、かつて機械式時計が“実用品”から“嗜好品”へと変化した歴史が思い返されます。
レザーアイテムが機械式時計と同じ道を進むのは自然な流れかもしれません。高価だからこそ、その分だけ特別感を求めるユーザーに支持される……そんな構図が少しずつ形になりつつあるように感じます。
企業も暴利を貪りたいわけではない
ここまでお話しすると「値上がりばかりでブランドが儲けすぎなのでは?」と思われるかもしれませんが、決してそんなことばかりではありません。
企業も過度な値上げを好んでしているのではなく、長く続けるための現実的な施策として結果的に値上げという対応をしています。
日本のレザーブランドは「革製品が好き」「ものづくりにこだわりたい」からこそビジネスを続けていて、暴利を得るよりも、まずは存続することが重要。みなさんの生活に寄り添い続けるには、ある程度の利益がなければ成り立たないのです。
とはいえ、高付加価値のアイテムになっていくわけですから、ユーザーとしては「修理やケアが充実しているブランドを選ぶ」と長く使えてGOODな選択になりますね!
まとめ:変化を知っておこう
総じて、レザー市場は“大量生産から特別感へ”という変化の真っ只中にあります。
高騰や値上がりだけを見たら追いつけない思いもあるでしょう。それもまだ過渡期というから身構えてしまうのも納得です。
一方で、本日お伝えしたことを知らずに時間が過ぎると、手に入れたかったアイテムが手に入らないことも考えられます。
トレンドは引き続き「インフレ傾向、需要減」であることをご理解ください。
こうした課題はレザー業界全体の課題であり、多くのブランドが同様に苦心しています。もちろん、私たちFlathorityも同じように悩んでいるのが実情です。
しかし、幸いなことに、Flathorityではメーカー直販という強みがあります。
これを活かし、良い素材と高品質をお求めやすくご提供していく所存です。もちろん、10年前と同じ価格とはいきませんが、物を見て触れた際に価格に見合う価値を感じていただけるよう精進してまいります。
レザー業界には、活気あふれる人材もまだまだ居るので、一緒に美しい物作りを盛り上げていきましょう!
本日は以上です。
では、また!