レザー沼――それは財布やバッグはもちろん、スマホケースからマウスパッドに至るまで、身の回りを総革化してしまう愛好家の深い深い沼地。現に私自身もレザー沼の一員であり、このブログの読者の皆さまもレザーの魅力に取り憑かれた1人といえるでしょう。
では、皆さまはレザーのどんな所、どの要素に惹かれたのでしょうか。
長年レザーを好きでいると「漠然と好き」という想いが強いですよね。改めて「魅力はどこ?」と聞かれると困ってしまう感覚さえあります。
そこで、改めてレザーの魅力について考えてみました。
本記事では、そんなレザーの魔力を「経年変化」「五感刺激」「心理トリガー」という3つの軸で解剖します。
今回深掘りした結果、「そりゃあ男性がレザーに沼りやすいわけだ」との結論に至ったわけですが、そう思ったプロセスを一緒に辿っていきましょう。
読後には、あなたが革に惹かれてきた理由が腹落ちし、次の一品を選ぶ視点までクリアになるはずです。さぁ、沼地へ潜ってみましょう。
経年変化は“劣化”ではなく“同一化”
レザーの魅力を考えたときに真っ先に思い浮かべるのは「経年変化(エイジング)」だという方が多いのではないでしょうか。
私も最初に魅力と感じたのは経年変化でした。
事実としても、ほとんどの素材は色褪せや劣化がネガティブに映りますよね。紙や金属の劣化や腐食は必ずしも美しいものではありません。しかしレザーだけは「使い古し=価値が増す」として歓迎される珍しい存在です。
- 色ツヤが深まる:酸化とオイルの移行で飴色が濃くなり、光沢も増す
- 繊維が馴染む:曲げやすくなり、手へのフィット感が高まる
- ボロにならない:小傷や色ムラさえ“味”と捉えられ、むしろ愛着の証しとされる
加えて、エイジングしている間、レザーアイテムとは共に時間を過ごすわけですから、エイジングしているのは、何もレザーだけではありません。所有者である人間もエイジングするのです。共に変化した時間は愛着を育て、レザーと自身を同一化させます。
変化を歓迎できる特別な素材であることがレザー最大の魅力であり、それは自己の変化に対する歓迎でもあるといえるでしょう。
レザーが五感を動かす
続いての魅力は、レザーは五感に訴えかけやすい素材であるということです。なんと五感のうち、<味覚以外>に対してレザーは訴えかける力を持ちます。(さすがに食べられませんが、我こそはという強者いらっしゃいますかね。笑)
手ざわりと香り
植物タンニン仕上げのレザーはオイルを適度に含み、指先に吸い付くような粘りを保ちます。また、上質なクロム鞣しのレザーもサラッとしつつもモッチリ感もあり、大変気持ち良い。ずっと撫でていたくなるような心地よさがあるのです。
加えて、レザーって独特のレザーらしい香りがありませんか?
香りは加工方法で千差万別ですが、私にも癖になる気に入った香りのレザーが存在します。
香りは脳科学的にも重要な存在で、匂いを認識する脳の部位は、記憶を司る海馬という部位と隣接しています。そのため、好きな香りは脳を揺さぶり「懐かしさ」を呼び起こすのです。
視覚と聴覚
使い込むほど現れる経年変化は、視覚的な楽しみの代表例です。さらに、レザー製財布を曲げたときにわずかに鳴る「キュッ」という摩擦音も、革好きには堪りません。車好きはエンジン音を、写真家はシャッター音にこだわるように、レザー好きは革鳴りにこだわるのです。
このようにレザーは五感のうち、4つに訴えかける性能を有しています。入力される刺激が多ければ、ハマってしまうのは当然。思い出も増えていくことから沼りやすい要素といえるでしょう。
男性がハマる三つの心理トリガー
ここまで解説した内容を振り返っても男性が好きそうではありませんか?
時代的にあまり好まれない表現かもしれませんが、物を自身の一部と捉える姿勢は、男性趣味に寄っているなと思う次第です。もちろん、レザーは女性からも人気ですし、知識欲やコレクション欲は全ての人間の根源欲求ですから、あくまでも傾向としてお考えください。
ここでは、もう少し人の心にフォーカスして、男性がレザーに沼る理由を深掘りしていきます。
1.拡張された自己
消費者研究の第一人者であるヨーク大学のラッセル・ベルクは「人は所有物を通じて自己を拡張する」と述べました。これは上記で紹介した内容の裏付けみたいなもので、科学的にも認められていることの証明でもあります。
携行頻度の高い革小物はある種の“分身”になりやすく、特に使い慣れた道具を愛する男性に強く作用します 。
「こんな人にレザーは刺さる → 1つの物を長く大切に使う人」
2.機能美とステータスの両得
レザーの丈夫で修理可能という合理性が満足度を高めつつ、上質レザーはさりげなくステータスも演出します。着飾る文化がまだまだ未発達な男性社会において、実用性とステータスの二刀流が同時に満たせるレザーは根源欲求に深く響くのでしょう。
「こんな人にレザーは刺さる → 所有欲を大切にする人」
3.多様性が知識欲とコレクション欲を刺激
これまでもFlathorityブログを通じて、様々な情報を250記事以上にまとめて発信してきました。これでも語り尽くせないほど、奥深いのがレザーです。
タンナーは世界各地に数百社ありますし、仕上げ技法に至っては数える方が難しいでしょう。原料だけでも「イタリアのショルダー」や「北米ステア」「仏仔牛カーフ」と選択肢が広がり、染色・型押し・オイル量でさらに表情が分岐します。
この終わりなきバリエーションが、知識欲とコレクション欲を刺激するわけです。
また、一般に公開されていない情報もまだまだ多く、探求には終りがありません。深淵のような歴史と技術の集積が男心を刺激し、レザーの魅力を一層高めています。
「こんな人にレザーは刺さる →知的好奇心の強い人」
Flathority が提案する“沼入り”スターターセット
以上がレザーの魅力の深掘りでした。やはり、多くの男性が一度はレザーの魅力に取り憑かれるのには、きちんとした理由がありましたね!本記事ほどレザーの魅力について、人の心にまで追求した情報ってあまり他にはないと思います。共感したり、納得感を感じていただければ幸いです。
ここからは革の魅力をこれでもかと感じていただけるFlathorityのアイテムをご紹介します。レザーのプレゼントで悩んでいる方に特にオススメのラインナップです。ご自身へのご褒美やパートナーへの贈り物にご活用ください。
Pueblo Leather Flap Key Case FWS-102 ¥29,700(税込)
圧倒的な技術と手間を惜しまない丁寧な作り込みが特徴のワイルドスワンズとの特別なコラボアイテムです。カードなども収納できるギミック付きで、日常生活を彩ります。旧式の足踏みミシンで一目一目丁寧に縫われており、時間をたっぷり込めて作られた意欲作です。
メインマテリアルであるプエブロレザーは劇的な経年変化が特徴で、革の魅力をとことん味わうことができます。
Shell Cordovan Short Wallet FS-702 ¥41,800(税込)
アメリカの高級皮革であるホーウィンシェルコードバンを用いたアイテムです。
革の中でもとりわけ希少で高値で取引されているシェルコードバンを端切れなしで配した贅沢仕様。内装には牛のヌメ革と2種の素材でコントラストを生み出し、それぞれ異なった経年変化を1度にお楽しみいただけます。
他社の製造も受託しているファクトリーブランドの弊社としてもシェルコードバンは本当に特別で、クロコ(ワニ革)を除けば最高額の素材です。心理トリガーにあるステータスとしてもバッチリで「革のダイヤモンド」とも称されるシェルコードバンをお手軽にお楽しみください。
FlaBonheur Pencase 01 FB-501 ¥14,300(税込)
今ではあまり見かけなくなった絞りという技術で整形した1本挿しのペンケースです。絞りとは、レザーの不可逆性を利用したもので、レザーに水をつけて、ゆっくりと変形させる手法になります。レザーは一度変形すると元に戻らない作用があります。これが不可逆性です。(余談ですが、革製品を型崩れさせてはいけない理由でもあります)
この絞りで整形した現代では希少になりつつあるペンケース。モンブランやパイロットなど、文房具を愛する方にオススメです。
まとめ──レザーは“終わりなき沼”
レザーは五感に訴えかける強さと本能を刺激する面白さを併せ持ち、知識探求とコレクション欲にも終わりを与えません。だからこそ男性、ひいては人々を深く魅了します。
ほとんどの素材は色褪せや経年劣化がネガティブに見て取れますが、レザーはむしろ主観としての価値を高める珍しい素材でもあります。
もう沼っている方は引き続きレザー沼ライフを、まだ沼っていない方はぜひお待ちしております。
本日の記事で興味をそそられたという方は、他の記事でレザーの知識を深めていってください。
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次の記念日、プレゼントの機会で、ぜひレザーを手に取り、飴色に染まる未来を一緒に楽しんでみてください。
本日は以上です。
では、また。